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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十五話  ジャムシード
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だ。一生忘れる事は無いだろう、例え忘れようとしても。

「君の言う事は分かる。だが私はそれに同意しない。同盟は過ちを冒したがそれを民主共和政という政治制度に押し付けるべきではない。何故なら君主独裁政が必ずしも戦争遂行に向いているとは私は思わないからだ。周囲が反対しても君主の一存で戦争を始める、或いは継続する事が有る、それが君主独裁政だ」
「……」
強い口調だ。怒っているのかもしれない。

「問題は政治制度に有るのではない、主権者が戦争に対して真摯に向き合うか否かだ」
「……」
「戦争に対して真摯に向き合えば、それほど酷い事にはならないと私は思っている」
真摯に向き合うか……。

「帝国では皇帝と一握りの臣下で済む。だが同盟は百億以上の市民が対象になる。彼らの過半数以上が真摯に向き合えると思うか? シトレ」

「向き合うのだ、レベロ」
「……」
「そうでなければ民主共和政は機能しない。これは戦争だけの話じゃない、政治も同じだ。何一つとして上手く行かないだろう、違うか?」
「……」
確かにシトレの言う通りかもしれない。シトレが笑い出した。

「悲観的になるな。君の欠点だぞ。問題が起きると自分の所為だと思い込み自分を責める。挙句の果てに落ち込んで悲観的になる。昔から変わらない」
「私は悲観的になっているか」
「ああ、なっている」
気付かなかった。自分にはそんな欠点が有ったのか……。シトレが笑うのを止めた。

「状況は厳しい。だが敗北が決まったわけじゃない。弱気になるな、レベロ」
「ああ、そうだな。落ち込むのは敗けてからにしよう」
「戦争で敗けても外交が有る。講和交渉で挽回だって出来るだろう」
「講和交渉か……」
そうだな、それが有った。戦争は軍人に任せるしかない。政治家は講和交渉について準備をしなければならん。トリューニヒトに相談しなければ……。



帝国暦 490年 4月 7日   シヴァ星域 帝国軍総旗艦ロキ  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「ではウルヴァシーは占領したのですね」
『うむ、既にフェザーンからウルヴァシーに向けて補給物資が送られている』
「護衛は?」
『リンテレン提督率いる一個艦隊だ。十分であろう』
スクリーンに映るシュタインホフは事も無げな感じだった。そうだな、原作とは違う。同盟軍はこっちを食い止めようと必死で戻っている。補給を叩くような余裕はない。十分だろう。

『現時点において作戦に重大な支障は発生していない。統帥本部はそう考えている。ヴァレンシュタイン司令長官にはこのまま作戦の実行にあたっていただきたい』
「承知しました。メルカッツ副司令長官も予定通りですか」
『予定通りだ、問題は無い』
シュタインホフが重々しく頷いた。
「ではこの後はニ
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