第3話 遺跡出現までの10日間【1日目】 その1
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る。なんだあの耳……狐の耳みたいだけど……あれが獣人っていう種族なのかな……。というか服がボロボロだ……体もやせ細っているし……親は誰だろう…と思っていると―――――――――
グルグルグル……
獣人の女の子のお腹が鳴った。お腹が空いているのかな……。
「これ、冷めちゃってるけど……い――――――うおっ!?」
冷めたアイスル牛の串焼肉を紙袋から出すと狐の耳を生やした少女はそれに飛びつき僕から奪うようにして。……夢中で食べているようだ……。あっという間に一本食べ終わったのでもう一本紙袋から取り出す。
「!!!」
少女は目を輝かせるとそれにも飛びつきむしゃむしゃと食べ始める。その姿がつい可愛くていつの間にか全部の串焼肉を食べさせてしまった。
お腹がいっぱいになったのかボーっとしている少女の口の周りをマントで拭いていると――――――――
「あんた、人の奴隷に何やってんだい!」
「!?」
突然後ろから怒鳴り声がした。驚いて振り向くとそこには太った40代ぐらいのおばさんエルフが立っていた。
「い、いや……僕は…この子が何も食べてなさそうだったので……」
「お黙り! 人の奴隷のしつけに口を出してんじゃないよ! こうやって奴隷を甘やかす奴がいるからつけあがる奴隷が出てくるんだ……」
太ったエルフのおばさんはやれやれと首を振る。
「あっち行きな。商売の邪魔だよ!」
そう言うと太ったエルフのおばさんは僕を睨みつけながらシッシと手で払ってくる。
「ちょ、ちょっと待ってください……」
さすがに僕もカチンときたので言い返す。
「奴隷だからってそんな扱いしていいことないでしょう! ご飯もあげずにこき使うだなんて……あなたそれでもエルフですか!」
僕の言葉におばさんは額に青筋を浮かべる。
「そんな扱いって、これくらい普通だよ! あたしはどっかの変態どもみたいに奴隷を痛めつけたりするだけに買ってないんだ! それだけまだましだろ! 大体あんた何様のつもりだい、他種族の癖に偉そうに……」
「他種族とかどうとか関係ない! ……自分の奴隷にこんなことして―――――あんたの良心は傷まないのか!!!」
僕はこの世界に来て初めて激怒した。太ったエルフのおばさんは一瞬ひるんだ表情を見せたがすぐにその表情を隠しヒステリックに叫びあげる。
「ああもう! うるさい奴だね、これ以上騒ぐなら衛兵を呼ぶよ!」
「クッ…………」
衛兵……おそらく警察のことだろう。捕まったら色々と面倒くさいことになりそうだ……。僕は両手を固く握りしめ、キッと太ったエルフのおばさんを睨みつけると道具屋を後にした。
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