プロローグ
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プロローグ
シンと静まった月夜の中、少年は笑みを浮かべていた。
「フンッ! ハッ! フンッ! ハッ!」
一突き一突きに自分の全力の力を込め、撃つ。両足を肩幅ぐらいに横に広げ両膝は少し屈伸した状態、決して前かがみにならず後ろ体重にもならない、体の正中線を真っ直ぐに、地面と直角に保ちながら拳を前に突き出す……ただ、たったそれだけの動作を繰り返す。
右手を突き出した瞬間、左足の足の裏にある前足底ぜんそくてい――――――――足の指の根元のふくらんだ部位に体重を乗せそこにさらに腰の回転を加えることによって自分の体重を拳に乗せ威力を増大させる。これを人に叩き込んだらどんなに気持ちいいだろう……。
「フンッ! ハッ! フンッ! ハッ……」
自分の肺が、全身の筋肉が悲鳴をあげるまでひたすらその動作を繰り返す。靴と砂地の地面が擦れ、砂がジャリ、ジャリ、となる。
全力で、思いっきり、丁寧に。
どれくらい続けただろうか、体が、肺が悲鳴を上げる。
静かに拳を突き出す動作をやめるとスッと、できるだけゆっくり両手を下げる。
「スウウッ――――――――――ハアアアァァ……」
夜の冷たい空気で火照った体を冷やしながら月が出ている方へ顔を向け目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整える。ゆっくり、ゆっくりと……………。
心地いい……。
余韻に浸る。そして―――――――――
「フンッ! ハッ! フンッ! ハッ……」
呼吸が整い、筋肉を少し休ませると先ほどと同じ動作を心の底から笑みを浮かべ、ただひたすら繰り返す。
☆ ☆ ☆
「ん? もう朝か……………」
毎朝6時30分に設定している目覚ましがなる前に僕にしては珍しく目を覚ます。
まだ眠気を感じながらフラフラと洗面所に向かう、全身の筋肉が昨夜の激しすぎる運動によって少し痛むが最近はいつものことなのであまり気にならない。僕の名前は山崎健斗。年齢は16歳だ。
父親が転勤し妹と母親は父親についていった。
僕は今の学校を辞めたくなかったのでここに残ることにしたのだが正直一緒についていけばよかったと思っている。ご飯も自分で作らないといけないし洗濯物も自分で干さないといけない。色々と大変なことばかりだ……。
もちろん親がいないので僕は勉強など全くせずに成績はどん底、正直学校を変わればよかったといまさらながら思う。
かろうじて絶対に通い続けると決めた道場に週二日通いつづけてはいるが………こんな世界では体術なんてそうそう使うこともない。絡んでくる不良なんて全くいないし、美少女が不良にナンパされて困っている場面に通りかかるなん
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