真逆の龍
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ら許可したから良かったものの、そうじゃなけりゃ今頃お前は胴体とおさらばしてたはずだ」
威圧は無い。ただ淡々と事実を伝えた。
孫呉の危うい状況を知り、益州としてではなく劉備軍として軍を動かした。民が感銘を受けようとも、軍は国が管理しているモノである。
客分として雇った以上、その采配は劉璋が握るべきなのだ。劉璋の庇い建てがなければ今頃桃香は冷たい土の下に居てもおかしくない。
この時点で劉備は劉璋に大きな借りを作っていることになる。
次に何を求められるか、此処に来てから劉璋と何度も話をしてきたが、桃香には分からなかった。
「南蛮遠征、んで孫呉との同盟が上手くいかなけりゃお前以外の劉備軍は全員俺の奴隷。失敗しても貸しはそれでちゃらにしてやる。喜べ」
「……なんで私は入ってないんですか?」
目を見開いた後、言い換えそうとするも引っかかった部分を問いかけた。
「そりゃあ……くく、お前の決断でお前の部下がどうなるかを思い知らせる為に決まってるだろ?」
「……」
「お前に拒否権は無い。せいぜい関羽や趙雲が頑張ってくれることを祈っとけ。南蛮もそろそろ潰したかったから邪魔はしねぇでやるよ。さ、この話は此処までだ」
じとりと睨む桃香を放っておいて、劉璋は上機嫌で机の上から文を取った。
「それより……この文をやろう」
「わわっ」
バサリと投げつけられてどうにか受け取った桃香。首を傾げてじっくりと読み進めていく内に……ぎゅうと眉根を寄せて苦い吐息を吐き出した。表情はみるみる内に蒼くなっていった。
「秋斗……さんが……」
苦悶に満ちた表情が目に入り、劉璋は厭らしく笑った。苦しみに悶える姿が、甘美な果実のようで。
「諸葛亮はよぉ、一人遊びに耽るくらいお熱な相手だってのに会えないなんて悲しいねぇ? 知らせてやったらどうだ? 独断で行った大事な仕事と、どっちに天秤が傾くかな?」
にんまりと細めた目が覗き込む。俯いた桃香と無理やり視線を合わせて、劉璋の口から小さく断続的な笑いが洩れる。
「くっくっ、俺に対する使者だから会わないでもいいぞ? どうせアレだろ、益州は曹操に従うかどうかってことを聞きに来るんだろうからお前なんざ必要ねぇわけで……それともお得意の“話し合い”ってのを持ちかけてみるか?
当然、俺は黒麒麟なんぞに話すことはねぇから曹操を連れて来いって言うだけだ。お前の言う話し合いって奴をやる義理も何もねぇし、仲良く手を繋ぐなんてまっぴら御免。みぃんな仲良く笑いあうなんてできっこないわなぁ?」
「そんなこと――」
むっとした桃香が口を開いた瞬間、劉璋はその唇に指を当てた。
「やってみなけりゃ分からねぇなんて言葉は聞きたくないねぇ。これは俺の意思だ。
お前がど
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