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乱世の確率事象改変
真逆の龍
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益州で一番上ならそれでいい。
 ふと、そこまで考えて思い付いた思考が一つ。

――誰も知らんことだ。劉備はきっと……一番上になど立ちたくない人間だろう。生まれた時から王である俺だから気付いた。アレは……王にはなれない。

 劉璋は確信していた。
 神輿として担がれているし信頼を繋ぐのは上手い。しかし先導者としての素質が見えない。
 漢の血筋だといっても民にまで親近感を持たせる行いは劉璋にとって有り得ないと感じるモノであり、それがいつか崩壊に繋がるのではないかと漠然とした予感があった。

――まあ……誰かがしなければならないからと“さも自分の意思であるように勘違いして”王にならんとしている滑稽な道化だからこそ気に入ったわけだがな。

 ふふん、と鼻を鳴らして酒を飲んだ。
 その化けの皮を剥いだ時の快感は如何様なものか。想像してみても分からない。
 あの整った顔が醜く崩れるなら、きっとそれは自分の心を今までで一番満たすに違いない。

 そんな楽しい妄想に耽って数瞬、小さく扉が音を立てた。
 もうそんな時間かと外を見れば陽が頂点より傾きはじめていた。

「……よぉ。今日は何か“楽しいこと”はあったかよ?」
「はいっ。街の長老さん達と会合してきましたよー」
「……それはまた随分とくっだらねぇ事して来たんだな。じじいやばばあと話して楽しいなんて脳みそ腐ってんじゃねぇの?」
「あ! お年寄りの凄さを分かってませんね? おじいちゃん達ってすっごくいろんなこと知ってるんですから!」
「興味ねぇ。ま、頭の中身が全部胸に行ってるような女にはお似合いの仕事かもしれねぇな」

 桃色の髪から甘い匂いが漂って、男の頬が僅かに綻ぶ。
 報告と称して懐柔に来る彼女との時間は、男にとっては悪くないモノだった。

 酷いっ、と絶句している劉備を余所に、劉璋は口を吊り上げて嗤った。

「は……お前にとっての楽しいことは俺にとって楽しいことじゃねぇ。はい。今日もお前とは意見が合いません。残念でしたー」
「そんなことないよ! 劉璋さんだって街に出てみたら分かるって!」
「俺は劉璋だぞ? なんでわざわざ街に出なきゃなんねぇんだ? お前と一緒にすんな平民」
「もう! いっつもそうやってバカにして!」
「バカにされたくなきゃもっと威厳を持てよ。俺とこうして話せてるだけありがたいと思え」

 言いつつも咎めず、劉璋のそんな対応にも慣れた桃香は不満そうにしながらも椅子に腰を下ろした。
 対面に座った桃香をじっくりと眺めてから視線を合わす。輝く意思を秘めた瞳を直視して、劉璋は薄く笑った。

「……お前らが来てから益州は確かに潤った。だがそこかしこで反発の声も出てる。特に公孫賛と諸葛亮を孫呉に遣わした独断は許されるもんじゃねぇ。俺が後か
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