真逆の龍
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の部下達のような……欲望を第一に考える自身の幸せに縋りつく人間に落としてやりたい。
――綺麗なモノは汚したくなる。人間だと思い知らせて堕としたくなる。世界は決して綺麗に出来てはいないんだと知らしめたくなる。
理解はされなくてもいいと彼は思う。普通の恋とは無縁だった彼の恋心は……何処か歪んでいた。
そんな想いを宿す劉璋の元に届いた手紙。
不機嫌の理由は『小娘』だけが理由では無かった。
文の端に綴られていた名前が……彼の苛立ちの最大要因。
「益州に来る使者は荀攸と……黒麒麟」
憎い相手に呪いを込めて読んでみた。
苛立ちの一番の原因は劉備軍に所属していた武将だということ。
劉備に尋ねてもはぐらかされ、関羽や張飛、趙雲、公孫賛や諸葛亮に聞いても答えは出ない。
黒麒麟のことを聞こうと呼び出してみたのだが、誰であっても喋りたがらない。
一度だけその男を否定したことがあった。
鼻で笑って、英雄とは言っても所詮は裏切り者、忠義も無いそこいらの馬の骨だと劉備たちの前で言ってみたのだ。
返されたモノは殺気と侮蔑と呆れだった。ぽつりと諸葛亮が言った言葉は今でも忘れない。
“蛙では空を飛べませんね”
侮辱だと分かって直ぐ、諸葛亮が夜にその男を想って何をしているかを暴露して恥をかかせたから怒りを発散出来たが……不思議なもやもやが心に湧いた。
劉備の視線が明らかな落胆に染まっていたのだ。自分とその男を比べて、間違いなく下に見られた。
劉備軍を抜けた裏切り者だが彼女達はその男になんら悪感情を持っていない。それが劉璋には信じられなかった。
これから戦うというのに、敵になったというのに、曹操と戦うには殺し合いをするしかないというのに……それを選んだ男を憎まない。
戻ってこないのはお前達に呆れたのだろう。ほらみろお前達の理想は幻想ではないか。手を繋ぐなどバカバカしい。お前達の元を抜けた黒麒麟がお前の理想が叶わないという証明だ。
そう言って嘲笑っても劉備は反論することなく、自分でなくても彼を繋ぎ止められると言うだけであった。
全く理解出来ないから余計に腹が立った。
今回の文で使者としてその男が来るという。
会うのは嫌だが、使者として来る以上は対応しなくてはならないのが太守の務め。
見極めてやる、と劉璋は心に決める。所詮は下賤な人間に過ぎないと劉備の前で証明し、敵対関係を明確化させて劉備の理想を否定し、その上で劉備を手に入れる。
そっとほくそ笑んだ劉璋は、また大きく伸びをした。
昼下がりで酔い潰れるのも対面的にはよろしくない。酒を程々に抑えて窓の外を見やった。
政治事は部下に任せておけばいい。内部の変革は行いたければ行えばいい。自分がこの
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