真逆の龍
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人を認めたからと他まで認めるなど思っておるなら……紫苑よ、お主は随分と生温くなったものよなぁ」
お前は敵かと、桔梗の目が伝えていた。
旧来の友として過ごしてきた二人ではあったが、意見が食い違うことなど数多にある。ただし、今回は少し色が違った。苛立ちはなく、嬉々とした澄んだ色に紫苑は眉を寄せる。
「……その三人と私達の何が違うッスか?」
「教えてやるかよこのたわけが。紫苑もな。
このまま儂を懐柔しようとあれこれ手を巡らすつもりなら縁を切ってやりたいわい」
ジトリと藪睨みした後で瓶を掴み、一気に中身を飲み干した桔梗。がちゃん、と荒々しく机の上に置いて彼女は背を向けて歩き始めた。
歩むこと数歩。ピタリと止まった彼女はくつくつと喉を鳴らした。
「……安心せい。劉備殿の言い分が正しいことなど分かっておるわ。お主らの“クソ坊主と似たり寄ったりな”遣り方が気に喰わんだけでな。同類になどなりとうないのだよ。
ただ、本気で戦をするというなら儂を呼べ。今度はしっかりと本気のコロシアイをしてやる。その後でもまだ儂を使いたいというのなら、クソ坊主を殴るいい機会になるじゃろうなぁ」
言い放ち、もう何も言うことは無いと彼女はゆったりと進んで行く。後ろの二人からも掛けられる言葉は無い。
誰にも分かるまい、胸の内に秘める渇望は満たされないのだから。彼女の心は、熱を求め続けていた。
寂しい風に髪が擽られた。空を見上げれば天は変わらず、日輪も変わることはなく。
――戦をしたくないから取り込む、そのやり方はきっと正しい。
人として肯定しても、桔梗という個人は肯定しない。
――だがの、儂はソレを完全に認めてはいかんのだ。
ギシリと握られる掌と、不敵な笑みは何処かの誰かに似ていた。
歩いた先には整列して待機していた兵士達。彼女の姿を見ただけで、誰一人乱れずに踵を鳴らした。
向けられる視線は信頼の証。誰よりも深く繋いだ絆の太さ。
思考を切って捨てた彼女はいつものように声を投げた。
「おう、主らよ。楽しい楽しい戦はまだまだ先じゃと。己らの存在証明を世に示すはまだ遠く。暫らくは楽しい楽しい訓練をさせてやろう」
誰ともなく嫌な空気を露骨に出して彼女に泣きそうな目を向けるも、声を出すものは一人も居なかった。
「励めよ、命を散らすバカ共。戦が待ち遠しいなら強くなれ。誰かに負けるなど許せんことだ」
そうだろう……同意を示すように視線を巡らせば、兵士は一人残らず頷いていた。
嬉しくて桔梗の顔が妖艶に綻んだ。楽しげに笑う姿は見た目に反して子供の如く。
「くくっ……命散らしても楽しみ戦え、ほんに主らは儂と同じ大バカ者じゃろうて」
――民の為、と綺麗事を口には出来ん。そんな
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