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乱世の確率事象改変
真逆の龍
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 特に厳顔さん。星さんや紫苑さんは文官と結構話すんで許されやすいです。しかし――」
「ああ、ああ、分かっとる。耳にたこじゃわ。だからこうして文官の目すら届かぬ東屋で昼食がてら酒で唇を濡らしておるんじゃろうに」

 そもそも武官文官の別なく“人”を見る二人であるからこそ文官達が向ける嫌悪や侮蔑に揺らがず、分かっているからこそ自身を押し通すことを選んでいるのが桔梗という女だった。
 彼女は藍々の視線を受け止めて何処か楽しげに笑った。

「で、小娘よ? 気配を消してまで儂らに何を聞きに来た? 先ほどの話も聞いておったじゃろ。わざわざ自分から出てきおってからに」

 一寸停止した藍々の気配が変わる。

「……劉表様の計画は全てが上手く行ってるわけじゃないッス。幻影に怯えすぎです。
 あの方は私達に託した、私達が出来ると信じた、不確定な計画をその都度修正して完成させられると信頼した、だから……」

 言葉を区切り、たっぷりと間を置いて彼女はついと目を細めた。

「……そろそろ本格的に協力してくれないッスかね? もう劉璋如きに構ってる暇はないんですよ。あなたの存在証明である戦すら出来なくなってしまいますよ、厳顔さん」
「ほう……」

 高ぶった空気はまるで戦場のよう。ぴりぴりとひり付く感覚が心地いい。桔梗の口は、無意識の内に吊り上っていた。
 紫苑の雰囲気も戦場のモノに変わる。

「藍々ちゃんは何か危機を感じたのかしら?」
「危機なんてもんじゃない。多分……此処からの対応を誤ると戦にさえ持ち込めずに負けるッス」
「その為に早くクソ坊主を消したいと?」
「穏やかに暮らしてもらうだけッスよ」
「端に追い遣って飼い殺すのが穏やかじゃと? くくっ、言葉を飾るなよ腹黒小娘が」

 心底可笑しいと桔梗は声を上げた。
 その目には侮蔑の光。彼女は立ち上がり藍々に殺気を叩きつけた。

「儂はお主らのそういう所が好かん。何も知らない優しいだけの主と、気に入らないモノがあれば日陰に追い遣ろうとする部下。
 策で追い詰めて失墜させるならまだ分かる。汚いもんは気に入らんが、頭の出来であっても勝負をしとる時点でどちらかが負けるのは必至じゃからの。
 しかしお主らは……白黒つけずにうやむやにしたまま同調させようとしよる。結局死にたくないから従うしかないと、そう思わせてな」

 ふん、と鼻息を一つ。荒々しく腰を下ろしてまた酒を煽った。
 藍々は何も言わず、彼女の目を見つめるだけ。
 まったく、とため息を吐いた紫苑は首を振った。

「あなたは鈴々ちゃんに負けたじゃない。さっきので言うなら勝者に従うのがあなたの言い分でしょう?」
「ああ、従ってやるとも。鈴々と白蓮と星にはな。儂が劉備軍で認めとるのはこの三人だけじゃ。その三
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