第十五話:買い物への道中
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いるようだし、このまま言わずに黙っていても戯言を事実だと公言しかねない。
しょうがない、答えるか。
「一回だけだ、それ以上は言わん」
「うんうん! りょーかい!」
「……了解」
楓子もマリスも、耳に手を当てて傾けるジェスチャーをしてくる。……必要あるのか? その動作。
「美人か如何かはどうでもいい、静かな奴がいいと思ってる。物事をある程度的確に判断してくれる人なら尚良い。そんで笑顔は可愛い方がいい……ってのが、俺のタイプだ」
地味に小っ恥ずかしいんだっての……全くよ。
俺は若干血の上った頭を、軽く振って下げるべく溜息を吐く。
「的格は兎も角、静かっ……!? ぬぐぐぅ……これじゃあ私の勝ち目が薄いっ……!」
「……やっぱり、麟斗を選んで良かった」
楓子とマリスが何やらボソボソ言っている。聞こえたのは楓子の言葉の最初ぐらい。
「的格? “終始的外れなアホンダラ” の間違いだろうが」
「ひどッ!? っていうか美人じゃなくて良いってどういう事? 異常だよ!」
「美人は三日見れば飽きる、お前とお袋でそう思い知った」
「脈が全くなーい!?」
頭を抱えて大絶叫し、ロッカーばりのヘッドバンギングをかます楓子から目線を外すと、今度はマリスが俺の腕をつついてきた。
「何だ?」
「……笑顔、可愛い?」
そこにあったのは……先までと変わらぬ、某ピンクベストの持ちネタでは無い、本物もかくやの “鬼瓦” だった。
「正直怖い」
「……ハードルが高い」
無表情のまま、全国大会を逃した高校三年の如く、項垂れた。
家を出た時とは対照的に、どんどん暗くなっていく二人を見て、俺は何故そうなるかも理解できず、理解そようともしないまま、ムトゥーヨガー堂の中へと足を踏み入れた。
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