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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第七話 誓い
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あることを、士郎は確信していた。
 
「相棒」

 囁くようにデルフリンガーが忠告する。答えるように、デルフリンガーの柄を手の甲で叩く。

「分かっている……しかし」
「どうかしたのか?」
「いや。あの人影、何処かで見たことがあるような……」
「気のせいじゃねえのか?」
「だといいが」

 水際に立った人影の一人が、杖を掲げ何やら呪文を唱え始めたことを確認すると、士郎は五十メイル以上離れた位置から、一気に飛び出した。

「ッ!?」
「っ!」

 五十メイルの距離を三秒もかからず走破する。並みの相手なら、気付かれることなく無力化することが出来るハズだった。が、どうやら敵は並ではないようだ。接近する士郎に対し、敵の反応は迅速的確なものだった。
 二つの人影は、士郎の接近に気付くと、示し合わせたかのように二手に別れる。人影は士郎から離れるように飛び退りながら、呪文を唱え、杖を振るう。
 小さい人影が構える杖からは、目に見えない巨大な風の塊。
 大きい人影が構える杖からは、巨大な火の玉。
 一方を対応すれば、もう一つの魔法が背後を襲うよう、魔法がタイミングをズラし放たれる。

 向かってくる魔法の先。人影に目を向ければ、深く被りこまれたフードから覗く口元は、既に呪文を唱え始めていた。防げばもう一つの魔法が背後を襲う。避ければ次の魔法が同じように襲ってくる。ただ、交互に魔法を放つという、単純な方法。しかし、それは単純であるからこそ、強力で打ち破りにくいものであった。複数の相手に対しては効果は少ないが、単独の相手にはこの上もなく強力な戦法。
 どんなに強いメイジであっても、一人では勝てない。
 敵もそう考えていることだろう。
 
 しかし、敵は知らない。
 魔法を向ける先にいる男のことを。
 衛宮士郎と言う男を。

 向かってくる魔法に目をやる。先に届くと判断した魔法――エア・ハンマーをデルフリンガー横凪に振るい切り裂く。弧を描くように振るった剣を止めることなく、身体を回転させ、背後から襲う巨大な炎の玉を断ち切る。魔法を破壊したことから発生するはずの、カマイタチや火の粉は、音速に迫る程の剣速が吹き飛ばす。

「えっ!?」
「っ!?」

 避けるか、何らかの魔法で防ぐだろうと思っていたのだろう。予想外の対処に一瞬詠唱が止まる。その隙を見逃すほど、士郎は甘くも間抜けでもなかった。地面を蹴り砕き、小さい襲撃者に懐に飛び込むと、フードの胸元を掴み、背後の大きい襲撃者に向かって投げつける。

「うそっ!」
「っぁ」

 小さい襲撃者は狙い違わず、大きい襲撃者にぶつかり地面に転がる。

「っもうッ! 何よいっ――」
「くぅっ」
「さて、少し話しを聞いてもよろしいかな?」

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