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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第七話 誓い
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のシロウ?」
「いや何、そこの水面から屋根が見えてな。雨が降って、湖の水位が上がったのじゃないかと思ってな」

 延々と続くラグドリアン湖を眺めていた士郎が、ポツリと呟いた言葉に、荷台から身を乗り出したルイズが、士郎に顔を寄せながら答えた。
 甘える猫のようなその姿に、思わず目が細まる。手綱から右手を外し、手の甲でルイズの頬を優しく撫でる。気持ちよさそうに微笑むと、ルイズは自分からその柔らかな頬をすり寄せてきた。
 猫そのものの様子に、今度は喉をくすぐるように指を動かすと、ルイズは喉を鳴らして声を漏らす。

「くぅ、んぅふふ……」

 声を掛けるどころか目さえ向けにくい、そんな二人だけの世界に、躊躇なく二つの声が踏み込んでくる。

「確かにそうね。以前、ラグドリアン湖に来た時は、岸辺はもっと向こうだった気がするし」
「でも、雨じゃないと思いますよ。大雨でしたら、ここだけこんな風になるのはおかしいです。だって、ここまで来る間に見た池や湖は、そんな様子は見られませんでしたし」
「まあ、確かにそうだな」

 士郎とルイズの世界に割り込んできたのは、艶やかな緑色の髪を持つロングビルと、しっとりとした黒髪のシエスタであった。ルイズと同じように、二人は荷台から身を乗り出して士郎に話しかけている。ロングビルはその豊かな胸を士郎の後頭部に当てながら、背後から抱きしめている。シエスタはルイズの反対側に身を乗り出し、手綱を握る左手に自分の手を添えている。
 左右と後ろを美女と美少女の三人で囲まれながら、自然に談笑する士郎に、並んで進む馬車の御者台に座るモンモランシーが、呆れた声をかけた。

「あんた達……仲がいいわね」
「えっ……まあ、ある意味戦友だしね」
「戦友?」

 一度士郎に目を向けた後、首だけをモンモランシーに向けたルイズは、微妙な苦笑いを浮かべて答えた。ルイズの言った言葉の意味が分からず、モンモランシーはシエスタとロングビルに顔を向ける。すると、シエスタとロングビルは、互いに顔を見合わせ、ルイズと同じような微妙な苦笑を浮かべた。

「まあ、ね。確かに戦友みたいなものだね」
「ええ、確かにそうですね」
「?? どう言う意味? 意味分からないわよ。もっと分かりやすく教えて」

 困惑顔を向けてくるモンモランシーに、ルイズはもじもじと身体を揺すりながらそっぽを向く。シエスタは唇に人差し指を当てながら、眉根に皺を寄せて考え込んでいる。ロングビルは居心地が悪そうに、視線を微かに下げている士郎を見下ろすと、意地悪い笑みをモンモランシーに向ける。

「そうだねえ。姉妹とも言えるかもね」
「姉妹? どういう事ですかミス・ロングビル?」

 ますます意味が分からないと首を傾げるモンモランシーに、ロングビルは一度士郎達を
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