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SAO−銀ノ月−
第八十六話
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A−12を構えて戦闘態勢に――

「ま、待て!」

 ――高い女性の声がスタジアムに響き渡ると、銃士Xは持っていたアサルトライフルと《黒星》を地面に放棄した。そのまま《死銃》の証たる灰マントすらも脱ぎ捨てると――銀髪の女性アバターが露わになる――手を挙げて無抵抗を示す。まるで降参……いや、投降するかのようなその態度に、警戒しながら話が出来る距離まで接近する。

 その間中、銃士Xは終始何かに怯えるように周囲を見回しており、まるで誰かに見張られていたかのようだ。確かにスタジアムの中には誰もおらず、中継用とサテライト・スキャン用の映像端末も、急ぎ銃士Xが屋根のあるスタジアムに入ったからか、その姿もまだ見えない。

 脇目もふらずに逃げていたのはこの為か、と思いつつも、俺は銃士Xへと問いかける。

「……何の真似だ」

「違う、違うの……わたしじゃ……ないの」

 油断なくAA−12を構えながら詰問するが、銃士Xの口から紡がれる言葉は要領を得ない。彼女も動揺しているらしく、やはり怯えているかのようにその身体を震わせている。……見た限りでは、演技だとはとても思えない。

「何が違うんだ。サティを撃った……殺したのはお前だろう」

「違うの! まさか、本当に《ゼクシード》みたいになるなんて……」

 同じ会話をしている筈なのに、どうしても話が噛み合わない。どういうことかと、彼女が語った言葉――わたしじゃない、ゼクシードみたいに、なるなんて――を脳内で反芻していく。当の銃士X自体も冷静さを欠いており、順序だてて説明できるとは思えない。

「『わたしじゃない』ってどういうことだ……?」

「だからわたしじゃないの! わたしはアイツに言われて撃っただけでっ……!」

「……アイツ?」

「わたしのリアルでの名前とか住所とか分かってて、言う通りにしないと晒すって……!」

 半狂乱になりつつある銃士Xの言葉を紐解いていく。彼女の言葉を信じるならば、という前提はつくが……彼女は《死銃》ではなく、リアルでの情報を盾に脅されていただけの一般プレイヤーに過ぎない。そして《黒星》を渡され、特定の手順で引き金を引くことを要求されると、言われるがままサティを撃ち――結果的に、《死銃》の一員となってしまった。

 ここからは俺の勝手な想像ではあるが、リアルの情報を盾に《黒星》を与えられた人物は、恐らく銃士Xだけではない。さらに数人もの人物が《黒星》を持った《死銃》と化しており、何も知らずプレイヤーを殺害して回らされている……そして、最後にそのプレイヤーたちを全滅させるのが、大元の《死銃》――銃士Xが言う『アイツ』であり、俺とキリトが追っているプレイヤーだ。

「…………」

 何も知らないプレイヤーに、あのデスゲームの
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