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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
Down the stage
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保有者は、かの【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】首領のPoHを除いてただの一人も自我を保っていた者がいない。まさしく呪われたアイテムを持った者にふさわしい、呪われた末路を辿ることになる。

前例はあるものの、ユウキはその時のPoHの様子を伝聞でしか知らない。自我を保っていた、というが、それがどのレベルなのかは分からないのだ。

ただ、喘息のような少年の呼気を耳元で聞いている限り、決して楽観的な状況でないのは確実だろう。

眼の焦点すら合っていない少年は時折ユウキと会話しているにもかかわらず、ブツブツと不明瞭な言葉にもなっていない声を口内で転がす。

その様子に声をかけたかったが、その行為がどのような結果を招くとも知れず、結局少女は口を閉ざす。その代わり、レンの口から語られた言葉をゆっくりと咀嚼した。

五代目《災禍の鎧》討伐から発生した、歴代《鎧》の中でも屈指の異常事態(イレギュラー)

それまで五代に渡って暴走を止められ、仕留められてきた《鎧》が、壊れ、その三つの残骸が散らばった。

五代目討伐作戦は、ユウキにとってもつい昨日のことのように思い出される。いや、歴代の保有者達と戦った時の事は、ほぼすべて思い出される。

四代目で完全に消滅していたと思われていたので、五代目の出現でざわついた一面もあったが、おおむねそれまでと対応は同じだったはずだ。つまり、そのような異常が起きたのはこちらではなく、《鎧》のほうが限界だったのだろう。

だが、アイテムとしての《鎧》は限界でも、《災禍(なかみ)》は終わりを許そうとはしなかった。

復讐は、妄執に。

終結は、赦さなかったのだ。

結果、散らばった三つの破片のうち一つは近くにいたレンに。もう一つはALOにて激突しあったが、これも結局は少年が下したらしい。

そして、最後の一つ。

攻撃の《狂怒》

精神の《狂楽》

そして、防御の《狂哀》

いくらフェイバルがかつて六王にいたほどの実力者だったとしても、いくらなんでも高レベルの精神感応系心意と同じほどの防御系心意を会得するなどナンセンスだ。ありえない。

たとえ末席だとしても《絶剣》の全霊を賭した心意技をノーガードで生還するなど、初めから無理な相談なのだ。

今から思うと、と少女は先刻の記憶をリフレインする。

レンの一撃。

あれでフェイバルが初めて外的要因によって体勢を崩した時、首にできた空間の軋みとでも言うべきものは、それだったのではなかろうか。

絶剣(ユウキ)》の全力で可視化すらできなかったものが表面化された瞬間。その証。

「……………………」

ユウキは、思わず黙った。

技をもってして届かない高みを、言外に突き付けられているようで。

自分など
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