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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 9.
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るい」と思った。いつの間にやら、ソレスタルビーイングの制服に着替えているではないか。
「元々トレミーは、俺達の艦だぜ。隊員の予備の制服も、ちゃんと積んでいるんだよ」
 にっと白い歯を見せるロックオンに、「俺なんか、ボビーから借りたままだ」とクロウはこぼす。「動きを邪魔しないのはいいが、この格好でブラスタに乗るのはな」
「じゃあ、別に問題無しだろ。俺達以外の誰が見るでなし」
「なら、何でお前は着替えたんだよ」
「決まってるだろ」と言いかけて、ロックオンはすごすごと退散する。
 仲間と遅い昼食をとり、日没後も監視を続ける。
 しかし、一向に変化は起こらず、投光器が照らす建物の外観が白く浮かび上がってもクロウ達は出撃する事ができなかった。
 館内への電気供給は中断しているのか、ズームをかけても1階の窓面は暗く、昼の賑わいをその光景から想像する事は難しい。
 クロウは、ちらりと映像を見てから目を閉じた。考えろ、考えるんだ、と自身に言い聞かせる。次元獣バスターとして、今の自分に何ができるのかを。
 それが結果として、あの鬼畜の野望を砕く事になればまんざらでもない。
「ちょっと1時間ばかり仕事熱心になってもいいか?」
 突然立ち上がるとクロウはロックオンにそう告げ、格納庫に急ぎブラスタを起動させる。
『クロウ! 何を始めるつもりなの?』
 問いつめるスメラギに、「ヒントを探しに下りるだけだ。何ができるのかを見つけるヒント、ってやつをな」と正直に答え、半ば強引に発進許可を取り付ける。
「クロウ・ブルースト、ブラスタ。発進する」
 機体射出時のGが消失すると、クロウは機体の高度を下げ、緩やかに地上への降下にかかる。途中マクロス・クォーターを掠めたが、皆クロウよりは行儀が良いようだ。
 直線で形取られた白銀の人型兵器が、左手に盾を構え足を下に向けた姿勢で降下する。照らすのは月ばかりで、単機のブラスタを青い月光が淡く照らしてくれる。こんな夜でなければ、なかなか味のある絵だと感じ入る事もあったろう。
 しかし今は、平時ではない。
 ただ1機地上を目指すZEXISの機体に、下でも頓着しはしない筈だ。そう考え着地したが、実際に迎えの1人も出て来なかった。
 地上の監視要員は、昼間客達を車両で送り出した場所まで下がり遠方からの活動に留めている。時刻は、午後7時11分。日本のサラリーマンなら、仕事や買い物に精力的な時間帯だ。ところが、この一帯だけは既に深夜の様相を呈している。
 しかも、投光器の物々しさが異様な雰囲気を醸し出していた。時間の流れは止まっているのに、不気味さが半端ではない。
「ん?」
 モニターの端で、何かが動いた。大きさとしては人間のサイズだが、何より気になったのは建物の中に入って行ったように見えた事だ。
 スメラギ達に報告
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