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リア充ストヲカア
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[1] 最後
俺達は付き合うことになった。

喜びと共に沸き上げてくるのはやはり悲しみであったのだ。背反となるべき二感情をどうにも呑み込めないA君はいつの間にか鳥の囀りを聞くまでになっていた。

「眠い」

口癖になってしまったこの言葉は大して意味もなく、早朝のぼやけた空気に吸い込まれていった。
A君はまずほどよく温まった布団から這い出、エアコンの電源を入れる。機械音に遮られ鳥は聞く影もなくなり、代わりにしては風情のない母親の足音が響いた。この家は築何十年だかの古き良き木造建築で、どこで何をしていようと筒抜けである。寝間着のままで無駄に急な階段を下り、リビングのこたつに滑り込む。と同時にテレビ、はすでについていた。

「あれ、珍しい。自分から起きてくるなんて」

つけて間もないこたつのせいで返事をするのも億劫だ。こんなことならいつものようにギリギリまで寝ておけばよかった。後悔からか、こたつに頭まで潜り、暗闇の中で携帯を開いた。Bさん専用フォルダにはすでに2000を越えるメールが保存されている。
上から一つ一つ、時を遡るようにゆっくりと眺めていく。すっかり定型文となってしまった愛の言葉に意味がないと言われればそれまでだが、想いはあるのだろう。そうしてみるとBさんへの愛がとてつもない大きさをもってA君の心を支配しているのがわかる。

「好きだ」

独り言に泣きそうになりながら、さっきからカチャカチャと煩い食器を確認する。明太子と味噌汁。シンプルイズベスト。問題ない。
心が満たされるとお腹もいっぱいになるとは良く言ったもので、これだけ腹が減っているのは満たされていない証拠なのだろうか。Bさんも腹が減るのだろう。

腹ごしらえもそこそこに、横に置いてあった青のバンダナの巻かれた弁当を持って二階へと駆ける。理由は一つ、寒い。


今日は俺の方が早く着く。

確信を常識に変えるため、高校の最寄り駅まで奔走する。
朝の時間というのはとても長く感じる。昼間はさほど気にしない1分1秒が惜しく思えるのだ。睡眠時間然り、今の待ち時間然り。逆にその惜しさ故に、高揚感に包まれ、それはそれは有意義な時間でしかなかった。
ふと振り返ると、Bさんがいる。向こうも気付いたようで、目を見開いて、笑顔で駆け寄ってくる。

かわいい。

抱き締めてあげたいのだが、何せ自転車を押しているのでおあずけとなってしまった。

「おはよう」

挨拶など、Bさんと以外小学校以来していない。此処に何らかの意味があるのかと考える。通過儀礼として、景気づけとして。どちらにせよしなければ胸糞悪いのだが、そのような状況に成り果ててしまったのは何故であろうか。鳩が忙しなく首を動かすのと同じような呑気な理由がどこかに転がっていないだろうか。
Bさんとの他愛もない会話の
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