3話 余興
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で、感謝する事はあっても邪魔などとは」
「はっは。それなら俺も安心できるぜ」
「いや、ギュランドロス様。ものすっごく、気を使われているだけだからね」
楽しい時間と言うのは、長くは続かない。流石に麾下達を待たせすぎているため、切り上げる。
「しかし、今日着いたばかりだろう? かなりの強行軍だっただろうし、半日ぐらい休めばどうだ?」
「いえ、それにはおよびません。この程度でへこたれる様な者は、我が麾下にはおりませんので」
麾下達を見てそう言うギュランドロス様に、静かに告げた。確かに疲労はあるが、実戦となれば疲れていようが戦わなければいけない。故に、どんな状態でも関係ないのである。何より、昼夜を問わない強行軍でここまで来たのである。夜、ゆっくりと眠れるだけでも充分すぎると思った。
「うーん。すっごい自信だね。常在戦場ってやつ?」
「そう言う事です」
パテルナ様が、その整った顔に不敵な笑みを浮かべ言った。目つきは、僅かに鋭くなっている。
彼女はユン・ガソルの兵士たちにとって、出れば戦局を動かす程の、いわば戦の象徴ともいえる人物であった。その腕には相当の自負を持っているのだろう。それはすでに解っていた。
「なら、あたしとやりあってみる?」
だからこそ、そう言われても特に慌てる事は無かった。
「本気でやりたいと言うのならば、何も言わずに仕掛けてくればよろしいのに」
仕掛けて来る様子の無いパティルナにそう返し、背を向け左手を軽く掲げた。
「なら、やるよ」
呟き。確かに聞こえた。刃、恐ろしい程の速さで向かってくるのが解った。当たればただでは済まない。聞こえてくる風切り音が、それ程のものであると告げていた。
「ふふ、では、また明日会いましょう」
横目に、呟く。愛馬が駆けていた。風を上回るほどの速度で交差する。その手綱を取り、瞬時に飛び乗る。勢いを一切殺さず、駆け抜けた。首の辺りで結っている髪を投刃が掠め、数本宙に舞った。構わず駆ける。眼前には麾下達が整然と並んでいた。今は、あそこが俺の居るべき場所であった。
「むー避けられた。本気で当てる気は無かったけど、やられたー」
「おう、頑張れよー」
背後から王の激励が聞こえた。一連のやり取りを見た筈なのだが平然と見送る我が王に、思わず苦笑が漏れた。
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