3話 余興
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をもっていくな!」
「いや、だってそこまで言ったら予想できるし」
「なんだと!? だとしても、言わないでおくのが人情ってもんだろう。ちくしょう」
一番良いところをパティルナに持っていかれたことに、ギュランドロスは猛然と抗議する。普段は豪放磊落であり細かい事は気にしないのだが、こう言う事に関しては拘りがあるらしく、少しばかり口を荒げた。そんなギュランドロスに、にやにやと笑いながらパティルナはさらりと言い返す。そんな自分の三銃士に衝撃を受けつつも、ギュランドロスは言うしかなかった。空気を読め、と。
「……ッ」
そんな二人の愉快なやり取りなど耳に入っていないかのように、エルミナは思考を続ける。果たして、自分ならば期日通りに辿り着けただろうか、と。ユイン・シルヴェストが率いてきたのは、騎兵であった。道程としては騎兵で普通に行軍して七日程度の距離に位置し、その場所から、通達を受けた時点で四日で辿り着く。
「騎兵を率いれば、やれない事は無い筈……」
呟いた。四日であるが、十分に訓練を施した騎兵を率いれば、エルミナも辿り着く自信はあった。昼夜を問わず駆け通し、数人の部下を奪落させても良いと言う条件ならば、やれる。それは事実であった。エルミナ自身は、ギュランドロスが騎兵を指揮する都合から、どちらかと言えば歩兵を指揮するほうが慣れているのだが、騎兵ができないと言う訳では無い。三銃士として恥ずかしくない程度に熟知はしているし、自負もあった。だからこそ驚いているのだ。
新兵を率いて、四日で到着した事に。
ユイン・シルヴェストの部下である騎馬隊は、ほぼ全てが新兵であり、数人だけ虜囚であった直属の部下を連れていると言った感じである。これまで訓練を施してはいるだろうが、まだひと月にも満たない程度の訓練しかできていないはずであった。通常の訓練度合いで考えれば、騎馬隊のような動きができる部隊、でしかない。
騎馬隊の行軍と言うのは速そうなイメージを持つだろうが、実際に集団で駆けるとなると相当難しい。まず、歩兵と違い足並みが揃わないのだ。兵士たちが騎乗する馬を巧みに操れないと、一定の速さで、一定間隔を保ったまま走ると言う事が、まずできないのだ。そのような状態で一斉に駆ければ、思い思いに駆ける騎兵同士がぶつかり合い、阿鼻叫喚の様相晒すのは想像に難くない。仮に隊列を組むことができたとしても、一番もたつく者の速度に合す事になる。つまり、錬度を上げなければ速度は出ないのである。相当な訓練を受けなければ、行軍するのも儘ならない。それが騎馬隊の行軍であった。
仮に、駆ける事が出来たとしても、昼夜を問わない行軍をする事で、ようやくたどり着けるのである。昼間は良いが、夜間の行軍もある。夜は見通しが悪く、視界が狭まる。どうしても昼間より行軍が
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