3話 余興
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エルミナに声をかけたから、あとは自分が向かうだけだと思いパティルナが扉に手をかけたところで、扉が開いた。勢いのままぶつかりそうになったのを何とかこらえ、扉を開けた人間に文句を言う。彼女の特徴的な主は、すぐに解るのである。
「いや、すまんすまん。悪気は無かったんだ、許してくれ」
「まあ、別に怒ってないけど、せめてノック位はして欲しいな」
「ああ、悪い。面白い事があったから、気が急いちまったんだ」
「面白い事?」
僅かに不満そうなパティルナに、ギュランドロスはすまんすまんと大らかに笑う。その様は、いつも通りであるのだが、すこぶる機嫌が良さそうに見える。にやにやと笑みを隠しきれておらず、若干挙動不審である。パティルナは、そんなギュランドロスの様子に不思議そうにしながらも聞き返した。
「ふっふっふ、聞きたいか?」
「まぁ、気になるしね」
勿体ぶるギュランドロスに、若干めんどくさくなりつつも、促す。
「ならば耳の穴をかっぽじって、よく聞くと良い!」
「ギュランドロス様、そう言うの良いから早く」
「ああ、もう! さっきからギュランドロス様、うるさいです! 静かにしてください」
「お、おう、すまん」
ある程度勿体ぶったところで満足したのか、漸く言葉を続けようとしたところで、ついにエルミナが切れた。何時も五月蠅いくらいのギュランドロスである。何やらテンションが上がっていたため、余計に騒がしく、最初は無視して仕事に励んでいたエルミナであるが、ついに我慢できなくなったと言う事だった。少しばかり顔を赤く染め、一気に捲し立てる。余程、イライラしていたらしく、その剣幕にさしものギュランドロスも少しばかり声を落とす。
「それで、何があったんですか?」
少しばかり静かになったギュランドロスに満足したところで、エルミナが続きを促す。なんだかんだ言って聞き耳は立てていたため、話自体には興味があったようだ。
「いやな、来た」
「は? 何がですか?」
「何がってそりゃお前、このタイミングならあいつに決まってるだろう」
「あいつじゃわかりません。名前を言ってください」
またもや勿体付けるギュランドロス。先ほどはエルミナの一喝に出鼻を挫かれたが、もう一度やり直そうと言う魂胆である。そんなギュランドロスに、エルミナは端的に切り返す。根が真面目な為、遊び心には疎いのである。
「ふっふっふ、それは――」
「ああ、噂のユイン・シルヴェストが到着したんだ」
「ほんとうですか?!」
ギュランドロスが今度こそ言い放とうとした瞬間、パティルナが思いついたかのように言った。それに、エルミナは目を見開き、驚く。彼女の中では、到着はまだ先と見当をつけていたのである。
「ちょ、おま!? パティ、一番良いところ
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