3話 余興
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ちを眺めた後、少し休む」
「了解です。では、お先に失礼します」
カイアスと別れる。そのまま暫く野営地を歩き、愛馬の傍らに立ち、麾下達の様子を眺める。談笑する者、軽く走り体を落ち着ける者、寝転がる者、語り合う者、馬の世話をする者など、多種多様であった。疲れこそ見えるが、それ以上に皆、どこか生き生きしている。そう感じた。
以前、ノイアス元帥の下で指揮していた時は、このように穏やかな雰囲気ではなかった。皆、どこかピリピリしていたように思う。麾下達は皆、自身には親しみを持っていてくれていたが、ノイアス元帥はどこか嫌われていたように思う。あまり、民を顧みる人物では無かったのである。ギュランドロスを主とした今だからこそ、余計に痛感する。上に立つものとしての器が、ノイアスとギュランドロスでは大きく差が出ていたのである。
「……とは言え、私が言える事でもないか。ふふ、どう言い繕おうとこの身は所詮裏切者でしかなく、誇れるものでは無いのだ。それでも、そうだったとしても俺は――」
そこまで口にしたところで、言葉を飲み込む。言葉にしたところで、意味などない。寧ろ、より惨めな気分になる。そんな気がした。全ては自分の胸の内に秘めるべきであり、それは吐露して良い想いでは無いのである。そう思い、気付けば高ぶっていた感情を落ち着ける。
「……思えば止まらず駆けてきた。すこし、疲れたのかもしれないな」
弱音など、自分らしくなかった。麾下達が野営しているが、自分の周りに誰もいないからこそ、零れたのかもしれない。そう、思った。傍らに立つ愛馬が、じっと此方を見つめている。馬は人間が思うよりもずっと賢い。自分でも気落ちしていると解るのだ、心配させてしまったのかもしれない。そう思った。一度だけ、優しくその首筋を撫でる。すると、何処となく寂しそうに嘶いた。やはり、心配されているのかもしれない。そう、思った。
「私も休む。日が昇ったら、起こしてくれ」
「はっ」
見回りをしていた麾下の一人を呼び止め、声をかけ告げた。疲れているから、らしくは無いのだろう。そう思い体を休める事にした。
「エル姉。そろそろ、みんなの訓練に行ってくるね」
「もう、そんな時間ですか。解りました、お願いします。私も時間を見て顔を出しますので、暫くお願いします」
「はいはい。じゃあ、頑張ってくるね!」
レイムレス要塞政務室。日が昇り、既にそれなりの時間が経ち、兵士たちが動き出すには丁度良さそうな頃合いを見て、パティルナがエルミナに声をかけた。朝食をとり、少しばかり時間を置いた後であったため、訓練をするには丁度良かったのである。
「おう、なんだパティ、もう行くのか?」
「わっ、びっくりした。もう、驚かせないでよ、ギュランドロス様」
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