流転
異端審問官との決別W
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ようじゃのう」
声の方を向くと、そこには満足げに頷くヴラドと疲弊しきった面持ちのアルバートの姿。
「まったく、ひやひやしましたぞ。ヴラド様、こういったことは事前にお話しくだされ」
僅かながら、その光景に私は安堵した。
自分の手を見ると、それは私のものでは無いながらも確かにあのホムンクルスの手。
「戸惑うのも無理はない。この瞬間から主は異端者となったのだからのう」
どうやら、彼は私がこの身体となった事に戸惑っていると勘違いをしているらしい。
いや、大丈夫だ―――。
私はゆっくりと上体を起こし、周囲を確認する。
アーシェは何処に―――。
先程見たもののせいか、彼女を確認しなければこの不安を拭いきれなかった。
「小娘なら別室で眠っておる。儂と殺り合おうとしたのじゃから当然の結果じゃな」
そうか、と胸を撫で下ろす。
やはりあれは夢であったのだろう。
そんな私を見て、ヴラドは顔をしかめた。
「てっきり小娘の具合を確かめると思っておったのじゃが」
それもそうだ。
以前胴体が千切れても尚、無事であった彼女が回復していないとは確かにおかしい。
「眠っている間になにか見たか?」
その言葉に驚くが、それもすぐに納得できた。
この儀式も初めてでは無いはず。
以前同じようなことがあり、あの夢のことを彼は予測していたのだろう。
私は彼らに見たものをありのままに話した。
「ふむ、それは記憶の追体験じゃな」
やはり、と言うべきか彼はその現象を知っているようだった。
「儂と小娘の細胞をもって作られている故、そのようなものを見たのであろう。…しかし、黒髪の少女か……ふむ」
そう言うと、彼は何かを考えるように黙り混む。
その、少女を知っているのですか―――。
私の問いかけに、ヴラドだけではなくアルバートの表情までも曇る。
私が聞いて良いことではなかったのだろうか。
確かに、彼女の事を彼らに聞いてしまうのも無粋な話かもしれない。
「ヴラド様、あの者の事は話しておいて良いのではないですか」
「ふむ…些か乗り気には慣れぬが……」
その口ぶりからすると、少女の事自体が彼にとって…いや、彼らにとっては良くないことのようだった。
ヴラドは不本意ながらもといった様子で、少女の事を語りだした。
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