第十三話:休息の一時
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足がしびれないな俺。
「お前……そこまでして俺を、居間へ留めておきたいか?」
「……麟斗の摩り方は上手。だからすぐに立ち直るべく、効率の良い方を選んだだけ」
「がーーーーーん!? 私って下手糞なの!?」
マリスがそう説明していたが、実はそれだけなら傍目にでも分かった。
なにせ楓子の手つきは相手を労わって楽になるよう優しく規則的に撫ぜるのではなく―――変態親父もかくやの手触りや感触を楽しむものだからだ。
いわば相手を慮らないものなので、寧ろ悪化したって不思議ではない。
下手糞の域をいっそ清々しいまでに、まるっきり飛び越えている。
「いや、もう擦らない。勉強が出来ないのなら、別件で覚える事があるからな」
「え〜……? 兄ちゃんそんな勉強ばっかりって、いまどき希少種なガリ勉なの? 見た目からも全く想像できないんだけどー……」
「……どっちかと言えば、麟斗は不良且つ喧嘩屋」
「そうか、こんな人相で悪かったな」
棒読みでそう告げてから、床に置きっぱなしになっていた、楓子の書きだした設定が詰まっている何処で売っているかも分からない分厚い大学ノートを手に取る。
その理由は単純。
【A.N.G】について触り部分の説明と、特徴的な能力だけでも覚えておくためだ。
楓子を頼りにするのは正直なところ嫌だし、何より咄嗟の時に役に立たない可能性が “大” とくれば、例え文字酔いしようとも自分を頼りにするしかないだろう。
この世で楓子ほど信頼するに値しない人間は、それこそ殆ど存在しないと断じていい。 絶対にではなく “殆ど” なのは……この世界、何が起こるか分からない部分もあるからな。
パラパラと音を立て、黒焦げて尚且つ解読できない場所を省きつつ、何割かの “無駄” で構成された文章を読み進めて行くのだが、その無だ且つ無駄且つ無駄な部分が邪魔をして、本当に基本的なことしか頭に入ってこない。
加えてマリスを除いた、他五人全員分を覚えるとなると、もう地獄の所業に近い。
それでも何とか基礎中の基礎だけは覚えて、ノートを畳へと放りだした。
「どうだった! どうだった兄ちゃん!」
如何やら楓子は、自分が作った設定を見られても恥ずかしくない質らしく、しかも目を輝かせて感想まで求めて来る。
そうか、感想が欲しいか。
ならハッキリと言ってやる。
「最高に最低、そして最悪」
「……Oh……」
頭を抱えて地べた―――では無く畳に額を付け、ハニワのような顔で固まった。そのままずっと黙っていてくれれば、俺としては願ってもみない僥倖だな。
さてそんな阿呆は放っておき、無駄な部分を極力省いた文章を頭の中で反芻していると……少
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