第十三話:休息の一時
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」
ズボンを気にしながらも僅かに近づき、俺はマリスの傍で屈み膝をついた。
そのまま徐に右手を持ち上げる。
「ダメーーーーーー!」
そして、何故だか耳煩く喚きつつ、ラリアットの構えで近づいてきた楓子を止めると、
「失せろ」
右手で腕を左手で手首を掴んで、後方の壁めがけて放り投げた。
「ッグハァーン!?」
そして聞こえる奇声の悲鳴。
パッカーン! と随分といい音がしたので、打ちどころが何処なのか気にはなる……だがそれは好奇心からであり、あんな馬鹿を心配する気など毛頭ない。
「何すんのよ兄ちゃぁぁぁん!!」
「……チッ」
投げの威力から気絶して寝てくれれば此方も助かったが、誠に残念な事に普通に立ち上がって怒鳴ってきた。
……もっと力を込めるべきだったな。
「何しやがるはこっちの台詞だ。行き成りラリアットをかますな」
「ずるいんだもん! マリスたんにだけ! ずるいんだもん! ヒイキ! ヒイキ! ヒイキヒイキ!!」
「はぁ……?」
「だって! マリスたんのお腹さするなら、あたしのおっぱいモゲラ!!」
喋らせていても碌な事にならないと悟り、俺は逆にラリアットを打ち込んで、楓子を再び壁へと衝突させた。
どの国だろうと通用しない理屈を、延々と語られてもいらつくだけなんでね。
改めてマリスの腹に手をやり、ゆっくりとさする。
「……ありがとう」
「吐きそうになったら言え。洗面器を持ってきてやる」
「……麟斗、優しい」
「嘔吐物をぶちまけられるのが御免なだけだ」
一面に飛び散るし、掃除に時間も掛かるし、なにより臭い。責任を押し付けられるのが主に俺なら、最低限の手を尽くすのは当たり前だろう。
面倒臭い拳骨や説教を、態々呼び込む気はない。
……そういえば、拳骨が痛かったのは殴られた直後までだったな。……何時もならもう少し痛みが後を引く筈なんだが……何が起こっているのやら。
「ウウ……生まれた時から唾つけ取るっちゅーのにぃ……」
「……楓子でも、譲れない」
楓子は険しい(つもりの)表情を作り、マリスは何時もの無表情のまま、お互いの目線で火花を散らしているが、どうせ内容は碌な事じゃあ無い。
故に口出し無用だ。
しっかしこいつは……また徹頭徹尾、無表情だな。
お陰で何を考えているか、どれだけ苦しいのか、限界なのか余裕なのかが全く分からん。
「マリス、無表情をもっと何とかできないか?」
「しょうがないじゃない兄ちゃん。マリスたんは “クーデレ” なんだから、愛想だって振り負けないよん」
「クーデレ?」
聞いた事があるが意
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