異端審問官との決別V
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へと落ちる私の腕。
まるで悪夢を見ているかのようだった。
「馬鹿だとは思わぬか。腕を失い、命まで奪われようとしている」
膝をつく私にヴラドがゆっくりと歩み寄る。
「その様な目にあってまで、その小娘に尽くす理由はなんだ…贖罪か?馬鹿らしいことだ…そのような自己満は主の人生を棒に降るに相応しい理由だったのか?」
そう言った瞬間、ヴラドは自らの手で私のもう片方の腕を切り飛ばす。
断末魔が響き渡った。
私のだ。
人とはこれほどの声が出るものなのかというほどの、激しい断末魔。
最早出血で意識が飛びかけていた。
「答えよ」
「ヴラド様ッ、もう十分でしょう。このような事が何になるというのですかッ」
私を守るかのように立ちふさがるアルバート。
「何にもならぬ。この様な、不明確な覚悟の一人の人間に優秀な身体を与え同胞としたところで世界の何にもならぬのだ」
「ヴラド様…」
「故に答えよ。何故、小娘に付き従う。その小娘の行動で世界が滅びんとするそのとき本当に主は斬れるのか」
遠退く意識のなか、絞り出すように声を放つ。
私は、私が守れなかった大切な人間の大切だった彼女を守りたい―――。
だが…本当にその時が来たならば斬ろう―――。
しかし、わかりもしない未来の為に無意味に殺したりはしない―――。
それは、何になろうとも私は人間であり続けたいからだ―――。
「そうか」
冷ややかに見下ろすヴラドの深紅の瞳。
それが私の見た最後の光景だった。
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