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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
もしも 〜 其処に有る危機(4)
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寂しい話だが已むを得ない。危険と思われているのは俺だけじゃない、リューネブルクも同様なのだ。
ラインハルトは敵を追っている様だが如何なるかな。武勲を上げる事が出来れば元帥に昇進も可能だ、原作に近い流れになるだろう。帝国はラインハルトの手で改革され宇宙は統一されるかもしれない。だが武勲を上げられない様だとちょっと厳しい。ラインハルトは皇帝には成れないかもしれん。だとすると帝国はこのままか?
面白く無いな。これ以上門閥貴族の横暴など見たくないし宇宙が地球教とフェザーンの物になるのも御免だ。警告を出す必要が有る。だが今じゃない、少しずつタイミングを見計らってだ。その時はリヒテンラーデ侯は発狂するかもしれない、或いは発作でも起こすか、楽しみだな。だが先ずは軽くジャブの一発も叩き込んでおくか。
帝国暦487年 5月 3日 オーディン 新無憂宮 黒真珠の間 フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト
広大な黒真珠の間には大勢の人間が集まっていた。大貴族、高級文官、武官が幅六メートルの赤を基調とした絨緞をはさんで整然と列を作って並んでいる。俺もその一人だ、正規艦隊司令官フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将。かつては遥か下座で参列していたが今ではかなり上座に並ぶ事となった。俺の年齢からすれば異例といって良いかもしれない。
古風なラッパの音が黒真珠の間に響いた。その音とともに参列者が姿勢を正す。俺も姿勢を正した。
「全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国フリードリヒ四世陛下の御入来」
式部官の声と帝国国歌の荘重な音楽が響いた。そして参列者は頭を深々と下げる。
国家が流れ終ってから頭をゆっくりと上げた。皇帝フリードリヒ四世陛下が豪奢な椅子に座っていた。顔色が良くない、皇帝は何処か疲れた様な表情をしていた。
「士官学校校長、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン殿」
式部官の朗々たる声がヴァレンシュタイン中将の名を呼んだ。その声とともに絨毯を踏んで中将が陛下に近づいてくる。
気に入らん、どうして中将なのだ。本来なら大将、宇宙艦隊副司令長官だった筈だ。それが中将で士官学校校長? 馬鹿げている! それに今回の武勲で何故昇進しないのだ。ヴァレンシュタイン中将が居なければイゼルローン要塞は反乱軍の物になっていたかもしれんのだ。そうなれば帝国の安全保障は重大な危機に曝されていただろう。
ヴァレンシュタイン中将の武勲は他者の追随を許さぬ。俺達も艦隊編成では随分と世話になっている。言葉では言い尽くせぬ程だ。それを考えれば勲章だけで済ますなどおかしいではないか。納得がいかん! 軍上層部は中将に出世欲が無い事を良い事に中将を不当に扱っている、俺にはそうとしか思えない。
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