7部分:第七章
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第七章
「おや、日本から来られたのですか」
「はい、一人旅で」
「ううむ、珍しい方ですな。遠い東の国からわざわざこんなところまで一人で来られるとは」
「まあドイツ語も話せますし。それに旅は一人の方が何かと気楽ですしね」
「そうですか。それでここには何が目的で来られました?」
神父は少し探る目で尋ねてきた。
「森を見に来ました」
僕は素直に答えた。
「森、ですか」
それを聞いた神父の顔色が暗くなった。
「もしかして今日の午前にも」
何を聞きたいか僕にもわかった。
「はい、見ましたよ。残念ばがらこの目で」
僕は答えた。
「そうですか・・・・・・」
彼は視線を落として呟いた。どうやらこの話はもうこの小さな村にも聞き及んでいるようだ。
「実は僕は生物学を学んでいたのですが」
僕は神父に対して言った。
「あれは狼がやったとはとても思えないのですが」
「そうですか。それでは何だと思われます?」
神父は顔を上げて僕に尋ねてきた。
「それは・・・・・・」
急に突っ込まれたように感じ僕は口籠もった。
「狼男だと思ってはいませんか」
神父は探る様な目で僕に尋ねてきた。
「うっ・・・・・・」
僕は言葉を詰まらせた。その通りであった。こうした話は信じるほうなのだ。
「やはり」
神父はそれを聞いて静かに頷いた。
「私もそう考えています」
神父は瞑目して言った。
「ご存知かも知れませんが我が国は昔からこうした話が多いのです。森と城に囲まれた国でありますから」
「はあ」
僕は頷いた。ドイツ語を学ぶうえでこの国の歴史や文化についてもある程度は学んできた。そしてこの国の話には幽霊やそうした魔物の話が多いことに気付いた。
「死霊や妖精、魔女・・・・・・。古来より森には多くの異形の者が潜んでいると言われてきました」
「それは僕も。我が国でも童話等でよく読みましたし」
「意外ですね。我が国の事が童話で伝わっているとは」
神父は僕の言葉に対し意外といった顔をした。
「日本人は色々と細かい人達だとは聞いていましたがそんな事までご存知だとは。しかしこれでお話をしやすくなりました」
「はあ」
僕は相槌を打った。こうした態度は外国ではよく怒られるらしいが日本人独特の話の聞き方だと思うのでここでも使った。
「狼男はご存知ですね」
「童話や映画に出ている程度なら」
「それだけで充分です」
神父は微笑んで言った。まるで年老いた教師が幼い生徒に接するような笑みである。
「ただ一つ付け加えることがあります」
「それは何ですか?」
僕はあえて尋ねた。
「狼男は彼等の一部の名に過ぎないのです」
「といいますと?」
僕は話を突っ込んでみた。
「本来は人狼というのです。狼の力を備
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