暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 16
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 私が落ち着くまで黙って傍に居てくれたティーは、泣き疲れたアリアが眠る篭をテーブルに戻し、少し傷んだ手拭いをくれた。
 思えば、レゾネクトに捕まってからずっと泣き続けてた気がする。涙という物はそうそう涸れたりしないらしい。腫れて荒れた目元は、軽く拭いた程度でも結構痛い。
 「お主ら一行が異空間へ吹っ飛んだと噂が立って、大体二ヶ月から三ヶ月になるかの? 我はあまり人間世界に関わらぬ故、正確ではないが」
 つまり、アルフ達が殺されて約二、三ヶ月経っているのね。
 闇に囚われていた感覚があまりにも長かった所為で「もう」なのか、「まだ」なのか、受け止め方に迷う。
 「魔王の気配が消えたと、人間も悪魔も随分騒がしい。お主も当分、表には出ぬほうが良いぞ。厄介事に巻き込まれるでな」
 「厄介事……ですか?」
 椅子に座り直してじっと私の顔を覗き、何かを言おうとして……止めた?
 「……今は静養に専念するが良い。体は治せても、心の整理は容易くないでな」
 「いいえ。私が今必要としているのは休みではなく、アリアを護る手段を迅速に考案する思考能力です。あの男はこの世界に自分を呼べと言っていました。私にそうするだけの力は残っていませんが、アリアの力はそれを可能にしてしまう。アリアを……アリアの力をどうにか隠さなくては」
 冷静になる時間は充分に与えられた。
 レゾネクトの言葉をよくよく思い返せば、あの男は此方に戻って来られないと自身で告げている。
 私に声を届けた理屈は解らないけど、少なくとも現状ではアリアが干渉しない限り、レゾネクト本体は空間を越えられないんだわ。
 「ふぅむ……。確かに、魔王云々を除いて考えても、アリアの力は我らを遥かに上回っておるからのぅ。放置しては幼さ故の無自覚で何をしでかすか分からぬ。新神は通常自我を持つまで親が抑制するものだが、この場合は少々難しい」
 アリアの力は大きすぎる。私の手には負えないほどに。
 だからこそ考えなきゃいけない。どうやって護り、どう生かすのかを。
 「方法はあるが…… ?」
 「? ティー?」
 座ったままアリアのほうに顔を向けたティーが、じっと籠を見つめる。
 何が……
 「……っ!!」
 「これは困ったのぅ。あまり勧めたくない手段だったのだが、そうも言っておれぬようだ」
 立ち上がったティーがアリアに手を翳した瞬間、跳ね退けるような火花が散った。
 その色に、ティーの表情が少しだけ曇る。
 「……あぁ……っ!!」
 「落ち着け、マリア。戻せば良いのだ」
 「え……」
 翳したままの手から虹色の光がふわりと落ちて、小さな体を包む。
 いつの間にか目を覚ましていたアリアは、無言の内に再び眠りに就いた。
 「声とやらが聴こえた理由は、恐らくこれであろうな。我の力も取り込んで
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