リク
前書き [1]後書き
リクは一見暑そうなマスクを、静かにはずした。音を立てないのは。敵である奴が何処かにひそんでいるかもしれないから。
リクの口から出る白い息が体温の熱さを表していた。
リクが見渡す景色はどれもガレキの山だったり、崩れているビルばかり。リクはつまらないとでも言い出しそうな顔でガレキの山を後にした。
彼のために開いた自動ドアは音を立て、まるで彼の心を閉ざすように閉まった。
「リーク!!」
リクに親しげに話しかける少女。この少女こそ唯一彼が心を開くことができる存在。
「最近さぁ!私の銃。的に当たらなくてさぁ!銃がなまってんのかな?なんつって」
「アオイうるさい。言ってる意味わかんないし、詰まんない」
リクはその少女にそれだけ言うと足早に会議室へと向かった。
「コレによって、奴の数は増えてきて―」
上司の話を適当に聞き流し、先ほどのアオイとの会話を思い出していた。
銃を新調してくれと上司に掛け合ったところあっさり許可が出たので、リクにとってのこの会議での収穫は銃が新しくなるということだ。
何故、彼はこんなに彼にそぐわない仕事を、好きでもない仕事を続けているのだろう。リクに対してのアオイと周囲の人々の疑問でもあり、リク自身の鬼門であった。
その答えは、いずれも、母親が関係していた。
簡単に言えば母を喜ばせるため。難しく言えば自分自身を苦しませるためだった。
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