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101番目の舶ィ語
第九話。『音速境界』
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通り静かなものだったが。
ガキィィィィィン??
背後から刃物同士がぶつかり合う物騒な音が聞こえたので、俺は一之江の邪魔にならないように慌ててしゃがみこんだ。

「どうした? 俺達を殺害しないのか?」

氷澄という男は余裕なのか、そんな言葉を吐いて一之江を挑発した。
安い挑発だが俺が一之江ならば……。

「安い挑発ですが高くつきますよ?」

やっぱり買うだろうな。

「それか交渉の基本だろ?」

しかし、さっきから気にはなっていたが……。
______俺は眼中にないってか。

「わらわを殺してみよ、メリーズドール」

氷澄もラインもターゲットは一之江ってわけか。
巻き込まれた俺としては、こういう風に扱われることに対しては特に不満はないのだが……。
だけど、ちょっとばかしこの『(エネ)』さんこと俺と一之江を舐めていませんかね、 お二人さん?

「いいでしょう。貴女はモロに『ロア』。心を痛める理由もありません」

一之江は相手が『ロア』なら容赦するつもりはない。

「『想起跳躍(リンガーベル)』!」

その一之江の言葉を聞いた人物の背後に、一瞬で移動する能力。
その言葉を聞いた相手は必ず一之江に背後(バック)を取られるのだが……。

「遅いと言うておろう!」

気づけば、ラインは離れた電信柱の下に移動していた。
一瞬で移動する一之江よりも速くラインは移動できるようで。

「くっ、モンジ。私の顔を見ないように気を付けなさい! 『想起跳躍(リンガーベル)』!」

俺は初めて戦闘で一之江が焦った声を出すのを聞いた。
一之江が言葉を発した後に、俺は慌てて一之江の姿を見ないように視線を下げて。
人形らしいフリフリの、だけどボロボロの衣装を纏った一之江の。その体の、腰から下が見えないように注意深く手で目を覆いながらラインの背後に現れる姿を目で追い続けた。
だが、一之江が現れた場所には既にラインの姿はなかった。

「なんじゃ。やはりわらわには追いつけぬのか」

そんなのんびりした声は、俺の背後から聞こえた。

「一之江の空間跳躍よりも、もっと速く移動してるのか……?」

だが、そんなこと可能なのか?
あれはワープと同じだろ?
一之江の能力はそれこそズルなレベルで、声さえ届けばどんな空間だろうと超えられる能力のはずじゃ……?
……声さえ届けば?

「まさか」

「気付いたか。ラインは音速を超えての移動が可能だ」

俺の呟きに答えるかのように。氷澄が自慢気に語った。俺はその青い目をなるべく見ないようにしつつ、彼の言葉の意味を考える。

「一之江の技が……声、つまり音を使ったものだから」

「うむ。わらわはその音よりも速く動いているに過ぎぬ」

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