暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
闇の向こうに
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に惹かれるでしょうね」

相手を納得させるような大仰な身振り手振りはしない。扇動させるような台詞選びもない。

淡々と。

事実をただ述べた、という風なフェイバルのその言葉は、嘘だとはにわかに信じがたい真実味があった。

だが、信じられない。

いや、信じたくない。

バッ、と。少女は己の二の腕に視線を落とす。そこは予選決勝にて、《死銃》ザザに出会い頭に奇襲で貰った場所だった。

そこには、二の腕を覆う迷彩服(BDU)()()が走り、その下のアバター素体皮膚に黒々とした穴が開いていた。通常のダメージ判定の際に出るエフェクトとは絶対に違うそれからは、煙のような細い瘴気がしゅうしゅうと漏れている。

「ッ!まさかあの時!!」

「そうだよ。ザザに頼んで埋め込ませてもらった。ま、あっちもあっちで《因縁あるヤツ》と戦いたかったみたいだから、手を出さないという交換条件にはホイホイ乗ってきたよ」

「……じゃあ、レンをここまで傷つけたのは――――」

くすくす、と。

《無邪気》な嗤いが軋るように耳朶を打つ。



「君だよ、《絶剣》」



緩やかに流れたその言葉の羅列が脳に沁み込むまで、どれくらいかかっただろう。

完璧に。

完全に。

動きを止めた少女に、《無邪気》な声は嗤いを投げかける。

「先に言っておくよ、《絶剣》。レン君は襲い掛かってくる君に対して、ただの一度も手を上げなかった。ただの一度も、ね。彼はずっと、ただただ防御に徹してたんだ」

「そ……んな……」

「びっくりするほど献身的だよ。いっそ不気味でもある」

冷静に。

冷淡に。

冷酷に。

フェイバルは言葉を続ける。

()()()()()よ。はっきり言って」

「――――ッ!」

完全に《呑まれた》少女は、もう動けない。

理屈でなく、精神的に動けない。

だが、聞くことはできる。

抱く小さな身体に残された僅かな《芯》に力が入った音だけは。

「…………おいおい」

ギシギシ、と鳴る身体を無理矢理にでも動かして、少年は従姉の腕をすり抜けて、立ち上がる。

血走った双眸が蠢き、嗤う少女に照準を合わせた。

「ヒトが寝てる間に、ずいぶんと好き放題言ってくれんじゃん……!」

関節が焼きごてでも当てられているように熱い。

眼の焦点は会わず、視界は絶えずぼんやりとして明瞭としない。

だけど。

それでも。

立てる。立ち上がる。

少年は、一人の少女の声にならない心の叫びに無言で答える。

「……植え付けたはずだけど」

目を細め、同時に緩やかに腕を動かす――――臨戦態勢に
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