暁 〜小説投稿サイト〜
目覚めると
第四章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「川も使っておるがな」
「はい、広いですね」
「しかも深いな」
「水が多いですね」
「元々この辺りは川が多い」
 摂津の辺りはというののだ。
「淀川もあってな」
「その淀川も堀にしていますね」
「そうじゃ」
 城の北側がだ、仙人はそれも見て女房に話した。
「川をそのまま堀にするとは」
「こんな城は見たことも聞いたこともありません」
「わし等が起きていた頃にはな」
「とても」
「しかも城の外側だけでなく内側にもある」
 その堀がというのだ。
「これは堀を越えるだけでもな」
「相当に苦労しますね」
「壁も高く多い」
 堀の内側に沿って置かれている、穴が所々にある。上に瓦があるかない頑丈そうな壁である、しかもだった。
「石を積んでおるが」
「それも高いですね」
「しかも険しい」
「あれをよじ登ることも」
「難しいですね」
「しかも門の辺りも建物が多くな」
「あそこから物見をしたり弓矢を放つのですね」
「これは攻められん、しかもあれを見よ」
 仙人は城で最も目立つそれを指差して女房に言った。その指差した先にあるものはというと、
 五層の屋根、そして七階建てのとてつもなく大きくしかも高い建物だった、壁は黒く瓦は金箔で眩いばかりだ。
 造りは頑丈で雄々しい、しかもただ雄々しいだけでなく。
 仙人は息を飲んでだ、女房に言った。
「何と美しい」
「はい、雄々しいだけでなく」
 女房も息を飲み言う。
「美しくありますね」
「あれこそ益荒男じゃ」
 その美しさだというのだ。
「都の聚楽第よりもな」
「あれの方がですね」
「見事じゃ」
「それも遥かに」
「しかも町もな」
 それもだった、城の周りの大坂の町も。
「人も店も多くな」
「波止場の舟の数も凄いですね」
「都以上に栄えておるではないか」
「凄いものですね」
「いや、これもまた見事じゃ」
 大坂の町もというのだ。
「これは凄い、わし等が寝ている間に世は変わった」
「あまりにもですね」
「変わり過ぎた、全くの別物じゃ」
 そこまで変わったというのだ。
「素晴らしい、まことにな」
「左様ですね」
「寝過ぎてしまったわ」 
 仙人は女房と共にいる雲の上で実に残念そうに唸った。
「全く、これだけになる流れまでな」
「見たかったですね」
「そうじゃ、しかし今からでも遅くはない」
「と、いいますと」
「これからは世の者と同じく夜に寝て朝に起きてじゃ」
 これまでの様に一気に十年だの百年だの寝ずにというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですね」
「世を見ていこうぞ」
「そうしますか」
「まずは何故この城が出来たのか、そしてこうなるまで本朝がどう動いておったのか」
「そのことをですね」
「学ぶとしよ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ