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木綿の様に
第三章

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 どうも想像がつかなくてでだ、実際に着てから確かめようと思った。
 そして婚礼の時に着てみた、その感触は。
 さらさらとしていい、だが。
 羽織姿になってからだ、彼は親達に言った。
「これ綿より弱いな」
「そやから大事に着るんやぞ」
「汚したらあかんで」
「汚れたらそれでしまいやしな」
「酒なんか零しなや」
「この服があかん風になったらどうなる」
 与平は親達に問うた、その羽織j袴を見つつ。
「一体」
「そら捨てるしかないわ
「そうなったらしまいや」
「その時はな」
「また大金はたいて買うしかないわ」
 その絹の羽織をというのだ。
「絹は他に使えんさかいな」
「そうするしかないわ」
「そやから気をつけてや」
「式の時はおるんやで」
「そうか、随分苦しいものだな」
 与平は親達の話を聞いて難しい顔で思った、そして。
 式が全部終わってからだ、祖母のきねに言った。
「絹はよかった、けれどな」
「そやろ、汚したらあかんしな」
「着慣れていないせいか?」
「それもあるやろけれどな」
 それでもというのだ。
「やっぱりちゃうんや」
「綿とはか」
「そや、絹はどうしてもな」
「古くなったらしまいやしな」
「服以外にも使えないか」
「そや、しかも着心地がちゃうやろ」
「いい着心地だったさ」
 与平もこのことは認めた。
「けれどな」
「綿と比べてどうや」
「綿の方がよかった」
 与平の偽らざる気持ちだった。
「綿の方がずっと着ていて落ち着く」
「そういうもんや、綿はな」
「親しみやすい感じやな」
「絹よりもずっとな」
「そやろ、そやからな」
 是非にというのだ。
「綿は皆一杯植えててな」
「着るんだな」
「そういうことや、綿が一番や」
「みたいだな、それにな」
「それに?どうしたんや?」
「人間もか」 
 ここでだ、与平はこんなことも言った。
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