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第二章

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「自分でこう言ったのだ」
「こうって?」
「俺は他人が死んでも、殺されても何も思わない」
 反権力を掲げていると自分が思った連中にだ。
「理不尽に殺された人間の気持ちも考えようともしないとな」
「だから馬鹿なんだ」
「俺も今まで色々な人間を見て聞いてきたが」
 その人生の中でというのだ。
「その店員はだ」
「その中でもなんだ」
「最悪の馬鹿だ」
 口だけでなく顔全体を歪めての言葉だ。
「そんな馬鹿ははじめて聞いた」
「そうなんだ」
「そしてだ」
 さらに言う為景だった。
「そんな馬鹿な店員を雇っているその店はだ」
「いいお店だよ」
「いや、潰れる」
 そうなるというのだ。
「あと数年だな」
「数年でなんだ」
「その店は潰れる」
 為景は息子に断言した。
「御前は閉じられた店の入口を見るな」
「まさか。お客さんも一杯入ってるし」
「今はな」
「今はなんだ」
「そんな馬鹿を雇う店が普通の人間を雇っているものか」
 絶対にというのだ。
「だからだ」
「潰れるんだ」
「そうだ、もっともな」
「もっとも?」
「御前は客だ、店員じゃない」
「気にすることはないんだ」
「その店がどうなるか見ていろ」
 為景はこのことは冷静な顔と口調で述べた。
「これからな」
「うん、じゃあ」
「さて、母さん」
 為景は息子にここまで話してからだ、自分の右隣の席にいる妻の妙子に顔を向けてそのうえでこう言った。
「御飯おかわりくれるか」
「ええ、わかったわ」
「今日は腹が減るな」
 笑ってこうも言う為景だった、もうその店員と店のことはどうでもよくなっていた、
 店は繁盛していた、友はその店が潰れるとは全く思えなかった。だがだった。
 三年経った時にだ、急にだった。
 店の客が減った、それは何故かというと。
「サービス落ちたな」
「変な店員来たな」
「頭フケだらけでな」
「口も臭いな」
「風呂入ってるのか?」
「態度も悪くて」
「何であんな店員雇ったんだ」
 それにだった。
「品揃えも無茶苦茶になってきたな」
「他の店員も酷いしな」
「店の掃除もしなくなったり」
「汚くなったな」
「あんな店よりもな」
 それこそとだ、かつての客達は言うのだった。
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