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父との絆
第六章

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 陸、自分の家に戻ってだ、退院した父と母に笑顔で言った。
「やっぱりこの目で実際に見るとな」
「違うだろ」
「深海がどんな場所かもな」
 その目で見て、というのだ。
「わかったぜ」
「それは何よりだな」
「親父がいなかったのが残念、いや」
「俺もいたからな」
「ああ、そうだな」
 ここでだ、啓介は笑って父に答えた。
「親父もいたな」
「その目で深海を見ることは出来なかったけれどな」
 それでもだというのだ。
「いたからな」
「そうだったな」
「御前と一緒に深海に潜ったさ」
「そうだな、こいつと一緒だったからな」
 啓介は自分達が囲んでいるテーブルの上の瓶詰めの船を見た、もうダンボールもスポンジも剥がされてありのままの姿を見せている。
「親父と一緒だったな」
「そういうことだよ」
「そうだな、けれどな」
「今度の調査はか」
「身体ちゃんとしろよ」
 養生してというのだ。
「酒も甘いものも控えてな」
「これから甘いものは甘茶か」
「そんなお茶があるんだな」
「それ飲んで酒の量も控えて」
「そうよ、気をつけてね」
 ここでも優子が久作に咎める声で言う。
「さもないとね」
「もっと酷いことになるからか」
「命に関わるから」 
 それこそというのだ。
「気をつけてね」
「わかったよ、もう入院なんて懲り懲りだしな」
「そういうことでね」
「だからな、親父いいな」
 啓介も父にまた言う。
「今度は親父自身と一緒に行くからな」
「わかった、じゃあ養生するな」
「そうしろよ」
 少しやれやれといったものを含めながらも暖かい笑顔でだった、彼は父に言った。そうしてそれから深海で見たものを詳しく話した。かつて父に話してもらった深く暗いが独特のロマンがあるその世界と生きもの達のことを。


父との絆   完


                             2015・5・15
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