第一章
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父との絆
神久作は家でもよく海、それも深海のことを語っていた。
「海の底、深いところはな」
「凄く不思議な生きものがなんだ」
「一杯いるんだ」
こうだ、息子の啓介にも語るのだった、まだ幼い彼に。
「それこそな」
「鯛や鮫みたいなのじゃなくて」
「あんな魚はいない」
深海にはというのだ。
「もっと凄い魚が一杯いるんだ」
「お父さんがいつも図鑑で見せてくれる」
「ああ、ああしたな」
「身体がやけに長かったり変な顔していたり」
「ああした魚ばかりいるんだ」
それが深海だというのだ。
「凄いだろう」
「何で海の底にはあんな変なお魚ばかりいるの?」
「海はそんな世界なんだ」
「そんなって?」
「海も深いと水圧のことは話したな」
「うん、お水も浅いところなら何でもないけれど」
「深ければ深い程な」
それこそというのだ。
「その水圧が重くかかってな」
「それで身体にそれがかかってきたりして」
「大変になってくるんだ」
「息をすることも」
「そうだ、普通じゃなくなってきてな。周りも浅いところと違ってきていてな」
「それでなんだ」
「あんな色々な形になっていくんだ」
深海魚達はというのだ。
「色々とな」
「そうなんだ」
「深海は普通の海とは違うんだ」
浅い部分とだ、多くの人が普通の海だと感じているそことは。
「ああした魚が一杯いるんだぞ」
「凄い世界だね」
「そしてお父さんはな」
久作は笑って啓介にこう言うのだった、いつも。
「その深海のことを勉強するのが仕事なんだぞ」
「お父さん学者さんだからね」
「そうだ、海洋生物学者だ」
誇らしげに言うのだった、八条大学で生物学の准教授を務めている自分のことも。
「いい仕事だぞ」
「楽しい仕事なの?」
「とても楽しい仕事だぞ」
まさにというのだ。
「こんないい仕事はない」
「そんなにいいんだ」
「何度か潜水艦、潜水艇に乗って深海にも言ってるしな」
「そこに本当にこんなお魚がいるんだ」
「一杯いるんだ、中にはな」
「中には?」
「魚じゃないがこんな生きものもいる」
こう言ってだ、啓介に図鑑の中にいる白く一見るとダンゴムシに似た形の脚が多くある生物を指差して話した。
「これな」
「ええと、ダイオウグソクムシ」
「この生きものも面白くてな」
「何か凄い形だね」
「ああ、何ヶ月も食べなくても平気なんだ」
ここでだ、久作は手にしているウイスキーをストレートで飲んだ、あてのチョコレートもどんどん食べて上機嫌だ。
「凄いだろう」
「僕一食抜いたら動けなくなるよ」
「ははは、啓介は食いしん坊だからな」
「うん、いつもお腹一杯食べないとね」
それこそ
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