第一章
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八百屋の前
幹守静はあえて黒の胸のところが開きそしてスカートの丈も短い服を着た。ブラとショーツも黒にしてガーターを履いて。
髪は下ろし化粧も濃く艶やかなものにした、そしてだった。
夜の街に出た、その中にあるバーに入り。
カウンターで一人カクテルを楽しんでいた、その彼女の横に。
端整なスーツとコートで決めたオールバックの若い男が来た、細面の顔は引き締まり整っている。その彼がだった。
静の横に来てだ、こう声をかけてきた。
「いいかな」
「ええ、お酒ね」
「一緒に飲まない?」
「いいわよ」
蠱惑的な笑みでだ、静は答えた。
「こちらもね」
「ではね」
「それでは一緒にね」
「飲みましょう」
こうしてだった、静は彼と共にだった。
飲みはじめた、その時に彼の名前も尋ねた。
「名前は?」
「佐藤、佐藤俊彦というんだ」
「佐藤さんね」
「俊彦でいいよ」
「お仕事は」
「ビジネスマンさ」
俊彦はダンディな笑顔で答えた。
「今日も仕事の帰りでね」
「飲んでるのね」
「そうだよ、それで君は」
「幹守静というの」
名前からだ、静は名乗った。
「お仕事は。経営に携わってるわ」
「へえ、経営に」
「小さいところだけれどね」
くすりと笑っての言葉だった。
「そうしているわ」
「じゃあ今日は」
「お仕事がお休みで」
それで、というのだ。
「お昼はゆっくりとしてね」
「夜はこうしてだね」
「飲んでいるの」
「成程ね、それでここで僕と巡り会った」
「そうなるわね」
「偶発的出会いによる恋愛かな」
俊彦は気取った声で静に言って来た。
「これは」
「面白い言葉ね」
「サルトルだったかな」
俊彦はくすりと笑ってこの哲学者の名前を出した。
「確か」
「フランスの哲学者だったかしら」
「そうだよ、その人の言葉だったかな」
「インテリね」
静は口元に大人の笑みを浮かべて答えてだ、モスコミュールを一口飲み。
それからだ、こう言った。
「私と違って」
「そう言うんだ」
「色々と聞きたくなったわ」
「哲学のこと?」
「他のこともね」
「じゃあ今日は飲もうか」
俊彦は静の言葉を受けて今度はこう言った。
「お互い時間があるみたいだし」
「そうね、夜は長いわ」
「それじゃあね」
こうしてだった、二人はバーで飲んでだ。
そのまま流れでホテルに入った、ホテルのベッドの中でもだ。
二人はあれこれ話した、俊彦は横に寝ている静に言った。
「今日はね」
「色々お話したわね」
「楽しい夜だったよ」
「だったはないわよ」
「そう言うんだ」
「夜はまだあるわ」
「じゃあ今も」
「そう、これからもね」
この夜は
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