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釜の音
5部分:第五章
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の音に従うべきですか」
「人の言葉にしてもいいかも知れません」
 若松さんはこう言い換えてきた。
「聞かなければならない時に聞かなければ」
「破滅すると。そうなのですか」
 僕も話を聞いていてどうにも自分のことにも考えられて辛かった。僕もまた人の話を聞きはしないからである。
「わかりました。それでは」
「帰られるのですね」
「ええ。失礼しました」
 席を立って若松さんに言う。
「それではこれで」
「お疲れ様でした」
「いえいえ」
 その後で若松さんに玄関まで送ってもらい家路に着いた。そうしてその途中で白い道のある公園を歩いた。右手には緑の林があり左手には池がありそこには水鳥や蓮が浮かんでいる。水の中には鯉もいて実にいい風景である。
 その池を見ながら歩く。歩いていると足元に白い石を見た。
「白い石か」
 その石を見て思い出した。あの釜に使った石も白い石だという。しかも丸くて奇麗な石、まさに今目の前にある石がそれであった。
「そうだな」
 丁度この時気になる娘がいた。僕の好みの。
 その娘のことを占ってみようかと思い石を手に取った。だがそこには当然釜も何もないあるのは左手の池と右手の林だけだ。当然ながらそこで石が鳴るとはとても思えない。
 どうしたものかと思っていると白い道がある。そこを使ってみるこちにした。
 上に放り投げてみる。それで反応を確かめたが。
 鳴らなかった。僕はそれを見て思った。
「いいということかな」
 そう呟いてその場を後にした。その気になる娘の方から告白されたのは暫く後のことだった。どうやら僕の占いは当たったらしい。


釜の音   完


                2007・10・18

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