流転
座して微笑う串刺し公W
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数日がたち、私はこの異端者の城での生活にも慣れ始めていた。
彼らは異端審問官であった私を迫害することはなく、むしろ好意的に、まるで家族のように接してくれた。
無理をしているのだろう。
今まで自分達の仲間を殺してきた私を許せるはずなど無いのだから。
しかし、だからといい私を迫害してしまえば彼らも私たちと同じとなってしまう。
それは、彼らにとって何よりも忌むべきことだからだ。
だから、私は彼らと必要以上に接する事はなかった。
ここに居座らせてもらっている故の、私なりのせめてもの気遣いだ。
「もとからだったけれど、ここに来て随分と大人しいわね」
そんな私の気遣いにやはりというべきか、彼女は気付いてはいない。
当然だ―――。
素っ気ない私の態度に彼女は顔をしかめた。
「奴らから守ってあげているのだから、もう少し態度よくしてくれてもいいじゃない」
たしかに、私をこの場所へ連れて来てくれた恩はある。
この城は、本来私の居て良い場所ではないからだ―――。
その言葉に、よく意味が分からないというように彼女は首を傾げる。
「それは、あなたが異端者ではないからかしら?」
そういう事だ―――。
「そう…。いつまでもこの場所に留まっては居られないし…そろそろ頃合いも良いかもしれないわね」
この城を出るということなのだろうか。
審問官達が私の捜索を止める筈もなく、彼らから身を守る手立てもまだ定まっていないというのに。
時期尚早なのではないか―――。
私のその言葉に、彼女は再び顔をしかめた。
「ここに居づらいとか、出るのは早いとか…ちょっと我儘ね」
我儘はお互い様だ、と言いたい所だが今回の件に関しては確かに私の我儘。
私は喉まででかかったそれを飲み込んだ。
「言ったでしょ。良い頃合いだって」
なにか考えがあるのだろうか?
私は彼女に連れられるまま、城の奥へと足を進めた。
居住区を過ぎ、人がまばらになり始めた更に奥。
ろくに掃除もされていないのだろう、埃の目立つ通路の奥に古ぼけた木製扉の部屋が見えた。
いつもの調子で、言うよりも早く彼女はその扉を開け放つ。
「入るわよ」
あいた扉の先には様々な書物の陳列された棚と、中央の床には巨大な魔方陣。
他には怪しげな光を放つ様々な小瓶や、布で何かを被った寝床。
何かの儀式にでも使っているのだろうか。
その部屋には、私と彼女以外に二つの人影。
ヴラドとアルバート。
「入る、ではなく入ったであろう。相も変わらぬ無礼者じゃ」
「細かい事をいちいち五月蝿いわね」
今にも口論を始めそうな二人の間に割って入ったのはアルバートだった。
「ヴラド
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