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蛇帯
2部分:第二章
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に答える。
「ほら見ろ、これがその蛇だ」
「ああ、やっぱり」
 おそのは月明かりを頼りにその蛇を見て。納得した顔で頷くのだった。
「その蛇だよ、知ってるよ」
「蛇に知り合いがいるのかよ」
「だから違うんだって。いいかい?」
「ああ」
「その蛇はね。あたしのなんだよ」
 納得した顔にさらに笑みを加えて述べる。
「あたしの蛇なんだよ」
「!?馬鹿を言え」
 甚平は今のおそのの言葉に顔を顰めさせて反論する。
「おめえの蛇だってのか」
「そうだよ」
 その問いにもこう返事を返す。
「あたしのなんだよ」
「馬鹿を言え。うちには蛇はいねえぞ」
「それがいるんだよ」
 しかしおそのは笑ってまた言ってくるのだった。
「わからないかい?」
「どうわかれっていうんだよ。何が何だかよ」
「まあ出て来たっていうか変わったっていうかね」
「変わった!?」
「そうだね。こう言えばいいね」
 今度はこう言うのだった。相変わらず笑いながら。
「わかりやすいね」
「何が何だかわからないんだけれどよ」
「帯だよ」
 遂に答えを出してきた。
「あたし今帯してないだろ」
「んっ!?」 
 その言葉を聞いておそのの腹のところに目をやる。すると本当に帯がない。実にすっきりとしているがそれと共に何処か寂しくもあった。
「そういえばそうだな」
「あんたを待っていて腹にすえかねていたらね」
「ああ」
「帯が蛇になって家を出て行ったんだよ」
「何だって!?」
 それを聞いて驚くことしきりだった。これも無理のないことだった。何しろ最初はおそのもかなり驚いたのだ。それは隠せなかったのだ。
「それは本当なんだろうな」
「嘘を言ってもはじまらないだろう?」
 疑う夫に対して答える。
「そうじゃないかい?」
「まあそれはそうだけれどよ」
「そういうことさ。それであんたを捕まえに行ったんだよ」
「何てこった」
 そこまで聞いて思わず溜息をついた。折角楽しい思いで博打に精を出していたのにと思いそれが非常に残念であったのだ。
「そんなことになるなんてな」
「それもこれも御前さんが悪いんだよ」
 一瞬で笑顔から口を鳥みたいに尖らせてきて述べた。
「いっつもいっつも夜遅くまで博打してさ」
「勝ってるからいいじゃねえか」
「そういう問題じゃないよ。仕事が終わったら家に帰る」
 厳しい声で告げる。
「そういうことだよ」
「そう思うおめえの心が蛇になったってわけかい」
「これで納得したかい?」
「納得したくはねえな」
 この態度は相変わらずだった。
「そんなことはな。全く」
「けれど納得するしかないでしょ」
「ちっ、忌々しい」
 だが仕方ないというわけだった。紛れもない本音である。

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