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古城
6部分:第六章
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第六章

「何か」
「旅をしていると色々見ます」
「旅をしているとですか」
「はい。そもそもそれを見る為の旅なのですが」
 こうも述べる。
「それでもその中身は色々あります」
「左様ですか」
「ええ。かなり」
 また言うのだった。
「知ることは非常に多いです」
「左様ですか。それでですね」
「はい」
 今度はスタンフィールド卿から声をかけてきた。
「今後も旅を続けられるのですか」
「そのつもりです」
 朝食が来た。食パンをトーストにしたものに目玉焼き、それとソーセージを茹でたものであった。オーソドックスなイングリッシュ=ブレイクファストだった。
「まだ色々と見たいものがありますので」
「左様ですか」
「旦那様」
 後ろからメルヴィルの声がした。
「どうした」
「既に準備は整えました」
「そうか」
「はい。そういうことです」
「わかった。それでですね」
「ええ」
 またスタンフィールド卿に向けて話すのだった。スタンフィールド卿もそれに応える。
「申し訳ありませんがこの朝食の後で」
「予定通りにですね」
「そうです。それで宜しいでしょうか」
「もう少し滞在して頂いてよかったですが」
 これは社交辞令でなく本心だった。
「それも仕方ありませんね」
「申し訳ありません」
「いいです。では」
「はい」 
 また話になる。
「人というものは知られていたいものですね」
「ええ、それは」 
 スタンフィールド卿はあらためてオズワルド卿の言葉に頷くのであった。
「わかります。どんなことでも」
「そういうことです。私が思うのはそれです」
「左様ですか」
「ええ。それ以上は申しませんが」
 昨夜のことを言うつもりはなかった。言えなかったと言ってよかった。あえてそれは言わずにこの場を去ることにしたのだった。
「そういうことです。それではイングランドに来られた時は」
「ええ、御願いします」
「そういうことで」
 最後に言葉を交あわさせて城を出た。卿はここで蕎麦にいたメルヴィルに対して問うのだった。二人は既に車中の人であり古風な黒いタクシーの中にいた。そこで隣にいる彼に問うのだった。
「次の場所は何処だ」
「帰り道になりますが」
 メルヴィルは手許に広げてある地図を見ながら主に答えてきた。
「牧師館です」
「牧師館か」
「あの有名な場所がありますね」
「うむ」
 ボーリィ牧師館のことだ。イギリスだけではなく世界中でかなり有名な心霊スポットである。ここでは実に様々な亡霊が出ることで知られている。
「あそことは別の場所ですけれど」
「今度は何があったのだ?」
「まずは牧師の屋敷でした」
 牧師舘と言われているからこれは言うまでもなかった。
「ですがその牧師が悪魔崇
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