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逆さの砂時計
解かれる結び目 15
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 闇。
 真っ黒な闇。
 何処を向いても……顔の角度を変えているのかどうかすら分からなくなる闇だ。
 心臓の動きだけが異常に早くて、苦しくて……得体の知れない焦燥感を誘う。
 「やだ……」
 ねっとりと纏わり付く生温さを全身に感じる。湿った呼気が足元から這い上がって来る感触。
 逃れようとするのに、指の一本も動かない。
 「や……助け……っ」
 熱い息が太股から下腹部、脇腹、胸の頂き、首筋、顎を辿って、乱暴に口内を犯した。
 いやだと思っても体はされるがままで。
 涙目に唯一映るのは、何の感情も見えない紫の虹彩。
 「んん……んぅっ や! 助けて! 助けてア……!!」
 アルフリード。
 その名前を呼ぼうとして、喉が詰まる。
 悪魔に貫かれたからじゃない。呼べないと自分で理解してるからだ。
 呼んでも辛くなるだけだと知ってるから。
 「……して」
 もう嫌……。
 これ以上生きていたくない。何も見たくない。何も聞きたくない。
 「ころして……」
 アルフ達を殺した仇に刃も届かず、捕らわれ犯され続けるくらいなら……
 誰か、私を殺して。
 殺して!


 「殺してぇええッ!!」
 「第一声がそれかえ? 一族の末裔よ。神殿でどういう教育をされておったのだ、お主は」
 「……っ?」
 「まぁ、何があったかは一目瞭然故、呆れる訳にもゆかぬが……せっかく我が拾うた命。粗末に扱われても不愉快ぞ」
 ……誰?
 涙で滲んだ視界を木造の天井から右にずらして、この世の者とは思えない神々しい男性と目が合った。
 服装は何処にでもありそうな、少し痛んだ味気ない上着とズボンだけど……二十代後半の凛々しく端整な顔立ちに、日焼けとは縁が無さそうな艶々で滑らかな白い肌。耳に掛けるのも難しい短さのさらさらな白金髪と、なにこれ……虹色の虹彩? 七色を併せ持つ目なんて聞いたこと無い……。
 「……ふむ。異常は無さそうだの。どんな影響があるかとヒヤヒヤしたが、これならば問題あるまい」
 「影、響……問題?」
 男性は簡素な木製の椅子から立ち上がり、数歩後ろのテーブルに置かれた籠を両腕で抱えて座り直した。布団に埋まってる私にも見えるように傾けられたその中身は、敷き詰められた布団の上で虹色に光る赤子。
 眠ってるの? ぴくりともしないし、声も出してない。
 それにあれは……翼?
 「お主があまりに冷静さを欠いておったのでな。少々強引ではあったが、両者の生命を第一と考え、お主の体と胎児の時間を進めて産ませておいたのだ」
 「…………は?」
 時間を進めて……産ませた?
 「さて。お主、この子をどうするつもりかの? 先程から殺してくれ殺してくれと、物騒な事ばかり口走っておるが」
 どうするもなにも……え……?
 「早う答
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