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古城
4部分:第四章
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すね」
 スタンフィールド卿が右手を顔の高さに上げると指を鳴らした。するとすぐに二本のボトルと切られたチーズやソーセージを持ってメイドが姿を現わしたのだった。
「楽しみますか」
「宜しいですか」
「是非共。スコッチはお好きですか?」
「ロンドンでもよく飲んでおります」
 オズワルド卿はその口髭をほころばせて答えた。
「それで宜しいでしょうか」
「結構です。それでは今から早速」
「はい。メルヴィル」
 オズワルドはメルヴィルに顔を向けた。そのうえで彼に声をかけた。
「今日は御苦労だったな」
「お疲れ様でした、旦那様」
「そちらの方にも用意させて頂いています」
「スコッチをですか」
「勿論です」
 スタンフィールド卿はにこりと笑って述べた。
「では。早速」
「はい、楽しみましょう」
 こうしてオズワルド卿はスコッチを楽しむのだった。かなり飲んだところでいい時間になった。それに満足しつつ自分に用意された部屋に入る。部屋は豪奢なもので天幕のベッドに紅い絨毯が敷かれ大きなソファーまであった。ロンドンの一級のホテルのスイートにも匹敵するものだった。
 オズワルド卿は服を脱いでその天幕のベッドの中に入る。そうして眠りに入ったが深夜。ふと目を醒ましてしまったのだ。
 その深夜だ。彼はベッドの中でスタンフィールド卿の話を思い出した。あの少年の話を。
「今日も。出るのかだろうか」
 好奇心が心の中を支配していく。こうなるともうどうにもならなかった。彼はベッドを出て服を着て部屋の扉を開けた。それから廊下に出て歩きだした。
 暫く本当にいるのかどうか探していた。するとやがて。後ろから気配を感じたのだった。
「ねえ」
 後ろから彼に声をかけてきた。
「貴方は誰?」
「オズワルドという」
 彼はそれに応えて名乗った。名乗ると共に顔をその後ろに向けた。
「よければ覚えておいてくれ」
「オズワルドさんなんだ」
「如何にも」
 また答える。
「そういう貴殿は誰か。答えて欲しい」
「僕だよね」
 見ればそこには誰もいない。暗闇だけがある。しかし声だけは聞こえていた。少年の声が。
「左様。何処におられるか」
「ここにいるよ」
 今の言葉と共にであった。古いが立派な服を着た黒い髪の少年が姿を現わした。顔は蒼白でその表情は陰気で不気味なものだった。その顔を卿にも向けていた。
「オズワルドさん」
「何だ」
 卿に声をかけてきたのだった。
「時間。あるよね」
「ないわけではない」
 貴族に相応しい威厳で以って彼に応えた。

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