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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
38.煙は高々とのぼる
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する友人の方を振り向いた。

「はは、ははは!どうだよ、この力!本物だったぜ、『魔導書』は!!俺は炎の魔法を手に入れたッ!!」
「…………………」

 だが、友人は信じられないものを目にしたようにかちりと固まって微動だにせず、ただ眼を見開いて彼の方を見つめるばかりだった。

「おい、どうしたんだよ!!成功だぞ成功!!マジで大爆発の魔法を使えるかもしれないんだぜ!?」
「………お、お前、身体が――」
「身体ぁ?俺の漲る身体が一体どうしたっていうん――だ――?」

 不満をぶつけるように友人に指をさした彼は、そこで、致命的な事実に気付いた。


 腕が――燃えている。


 一瞬、彼は現実を受け入れられなかった。
 周囲もまた、何が起きているのか全く分からなかった。

 布を裂くような悲鳴が店内に響いて、やっと波紋という名の異常をその場の全員が認知した。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「な、なんだい!?これは……何事だい!?」
「わ、分かりません!お客さんが突然火に包まれて……!!」
「水だ!水を持ってこい!!大至急!!」

 腕だけではない。胴体、頭、足――体の全体が火に包まれ、皮膚がみるみるうちにぶくぶくとした気味の悪い水泡を作り、それがぶじゅりと弾け、爛れていく。服は炭化し、全身の穴という穴から噴き出すような炎が全身を真っ赤に照らした。

「いっ……ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!?ああ、ああああああああ!?!?熱い、あついあついアツイアツイアツイアツイィィィィィィッ!?」

 もしも、彼がその事態に気付かなければ――楽に死ねたろうに。魔法を覚えたせいで体が熱いのだと勘違いしたまま、幸せに逝けたろうに。事実を知ってしまったがゆえに――男は、全身を包む耐えがたい激痛に気付いてしまった。

 目が、耳が、喉が、鼻が、魂までもがその身を焼き尽くす業火に悶え苦しむ。
 悲鳴を上げてなお更に強くなるばかりの拷問のような熱さに立つこともままならず、熱で炭化したテーブルに倒れこむ。
 さっき頼んだばかりの料理がぐちゃくちゃになって床に投げ出され、安酒の入ったジョッキがテーブルから滑って割れる。それでも、痛みも熱さも収まらない。永遠に続くような地獄の責め苦は瞬く間に肉体と精神を破壊していく。

「うぅおおアアアアアアアアアアアアアアッ!!アアっ、ぎぎぎぎぎぎぎいいいいいいいいッ!?」
「駄目だ、火が強すぎる!?お客様、急いで店の外へ!!」
「女将さんも早くするニャ!このままじゃヤバイニャ!」
「ああ、アタシの店が――アタシの客が――!?」

 彼から立ち上る炎は既に床を焦がし、天井へと燃え移っていた。
 店の柱が炭化して、ミシミシと嫌な音
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