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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
38.煙は高々とのぼる
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ねえのか?『魔導書(グリモア)』なんて貴重品を安く売ってる時点で怪しいだろ」

 『魔導書(グリモア)』とは、それを最初に読んだ人に魔法を発現させる書物である。使い捨てで発現する魔法の内容は『魔導書』に記された内容に依存するものの、何の努力もなしに魔法を覚えられるとてつもない貴重品だ。『魔導』と『神秘』を極めた者にしか作成できないため、友人には男のそれが本物であるとは思えなかった。
 だが、友人の胡乱気な目線に気付いた彼はにやっと笑う。

「心配ご無用!念のために魔法使いの知り合いに鑑定してもらったから!こいつは、その効果のほどはさて置いて真っ赤な偽物ではないってお墨付きをもらったよ。内包された力は本物らしい」
「うーん………なんか納得いかねぇなあ。実はとてつもなくしょうもない魔法でも入ってんじゃねえの?」
「それは正直否定できないな……でもよぉ、この前だってホラ、あの白髪の新人がこの店で拾った『魔導書』で魔法を覚えたって噂になったじゃん?」
「まぁ確かにそんな噂はあったな。けどよぉ、噂は噂だ。それに奇跡ってのは二度と起こらないから奇跡なんだぜ?」
「おいおい、真っ向から否定してくれるなよ!誰だって必殺魔法には憧れるだろ!?」

 友人は疑り深く、そして彼は少々ロマンチスト。そんな凸凹の二人はいつでも一緒にいた。
 彼の出すぎなところを友人が諫め、友人の引っ込みすぎな所を彼が押す。二人は周囲から見ても相性のいいコンビだった。

「まったく……俺は知らんぞ?その魔導書に刻まれた魔法が全く使い道のない物で、3つしかない貴重なスロットを一つ潰しちまうとしてもな」
「ははっ、細かいこと気にすんなよ!どーせ俺には魔法の素養なんてないんだし?人生で一個でも覚えられれば儲けものってな!!」
「お気楽だねぇ………ま、いいさ!精々しょぼい魔法だって笑ってやるから」
「言ってろ!今に見てろ、大爆発の魔法とか習得してぎゃふんと言わせてやらぁ!!」

 とはいえ、彼も期待半分、不安半分だった。
 新しいことにチャレンジするにはいつだってなけなしの勇気をベットしなければならない。緊張で微かに手を震わせながら、彼はその黒塗りの『魔導書』をそっと開いて――その中身を覗いた。

「うおっ……!?」

 瞬間、灼熱のように熱い力が全身からこみ上げる。

「分かる……本の内容が分かるぜ。これは魘されるような熱……四大元素の一角、陽炎(サラマンダー)の息吹……原始的で美しい『火』を司る………!!」

 全身に熱が漲ってくる。彼は今、この書物には本当に素晴らしい力が宿っているのだと確信した。
 ああ、痛いほどに全身を滾らせるこの力を魔物にぶつけたら、どれほど美しい火柱が立ち上るのだろう。敵に魔法をぶつける自分の雄姿を想像した男は、喜びを共有
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