暁 〜小説投稿サイト〜
鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
38.煙は高々とのぼる
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
迎え入れるためにホームの入口へと向かった。

「おかえりっ!!」
「ただいま戻ったぞ、女神ヘスティア!」
「ただいま神様!今日も大漁でしたよっ!」
「えっと……その、ただいま?」
「アニエス……まだ慣れてないんだね。ただいま、ヘスティア様!」
「ただいまっ!さあ、急いでゴハンにしましょ?エアリーもうおなかペコペコよ!」

 お前は何もしてないだろ……とぼやいたリングアベルに怒ったエアリーが体当たりをかまし、ベルが諫め、ティズが苦笑いし、アニエスがエアリーを回収する。そんなおかしなやりとりをした後、今日もファミリアは全員で食卓を囲んだ。



 ティズとアニエス、ついでにエアリーがファミリアを訪れてから、様々な変化が起きた。

 まず、ファミリア初の魔法使いが追加したことで戦略の幅が大きく広がり、前衛と後衛の変化や使い勝手の悪かった弓の出番が増加した。これにより、今までどうにもとっつきにくかった飛行モンスターへの対処が素早くなった。結果としてファミリアの稼ぎも当然のように増加する。
 更に、数日前には『幸運が重なって』ベルがファイアボルトという強力な魔法を発現。戦力が大幅に増強された。

 また、時を同じくしてベルが偶然出会ったという【ソーマ・ファミリア】のサポーター、リリルカがダンジョンでのパーティーに追加され、持ち運べるアイテムの量が大幅に増加した。これによってファミリアの収入は加速度的に増加したと言えるだろう。

 全ては順風満帆に見えた。
 ティズとアニエスも一朝一夕に目的が達成できるとは考えていなかったため、焦ってはいない。ベルコンビはいつも通りに実力を伸ばし、ヘスティアもいつも通りにバイトに明け暮れた。収入は増えてるし、復興も少しずつ進んだ。

 だが、光に照らされる者もいれば、陰に隠れる者もいる。

 オラリオにも(アングラ)はある。

 闇討ち、暗殺、暗躍……秩序に反することは大なり小なりこの街の懐の中で行われているものだ。

 『神』という善性も悪性も併せ持つ気まぐれな存在がいればこそ、その陰はより濃く、深く、重い。



「へへっ、見てくれよこいつを!」
「そいつは……『魔導書(グリモア)』か?」

 その日、『豊饒の女主人』に若い二人組の客が訪れていた。
 別段珍しいことではない。この店はおさわり厳禁ではあるものの、美人の従業員が多くて料理も旨いため評判がいい。何より女将のミアの人柄の良さからか常連客の足が絶えない。だからどこぞのファミリアが飲みにやってきても、それは何度も繰り返された光景でしかない。

 若い男は、黒塗りの書物を手に持って自慢げに友人らしき男に胸を張る。

「へへっ、なんか最近出回ってるらしくてさ!露店で安く買えたんだよ!」
「偽物じゃ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ