ブラッド隊隊長
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――ヒロside
はて。この子は何を言っているのだろうか。俺は紛れもなくブラッド隊隊長だ。記憶だってしっかりある。 ジュリウス、ナナ、ロミオ、ギル、シエル…
共に死線をくぐり抜け、支え合って生きてきた仲間だって忘れてない。
……もしかしてこの子、可哀想な子なんじゃ……
一つの結論にたどり着き、同時に後悔の念が溢れる。
しまったな…同い年位の女の子だからって軽率だったか?少なくとも、彼女にとって不快であったに違いない。だからとっさにブラッド隊隊長なんて嘘をついてしまったのだろう。
うんうんと一人考え込み、答えを導き出した俺は少女に向き直る。
「俺が病室に案内するよ…」
「え?な、なんでですか?」
…これは思ったより深刻かもしれない。アラガミに身内を襲われ、心が折れてしまった人は少なくない。…この子もその一人というわけか……
こういった仕事は専門じゃないが、見捨てることは出来ない。俺が暫く介護しよう。
「取り敢えず、すぐそこだし、俺の部屋行こうか?」
「い、いえ。お気になさらず…私の部屋もすぐそこなので……」
バカな…この区画にこんな子居たか!?…いや、これも心に傷を負っているせいかもしれない。この子に話を合わせてみるか……
「そうなんだ。じゃあ一人でも大丈夫そうだね」
「はい。あの、なんかスミマセン…ご迷惑をおかけして……」
「いやいや、そんなことはないさ。君も、早く元気になってくれ…」
「…?…は、はい。ありがとうございます…」
どうやら俺のお節介だったようだ。この子は記憶の錯乱はあれど、常識あるし、ちゃんと話せるから大丈夫だろう。あとはヤエさんにまかせようか。
あ、ラウンジに行くついでに任務報告書を提出しようか。机に置いたままだったな。
俺は少女に手をふり、その場を立ち去る。少女はおどおどしながらも手を振り替えし、その場を離れた。
うん…?
振り替えると、少女が俺の後ろをついてきていた。
「…どうしたの?」
「い、いえ。私の部屋もこっちなので…」
ああなんだそういうこと。しかし、本当に放っておいていいのだろうか。彼女の気持ちも尊重したいし、部屋に戻る位なら別に構わないだろうし…
まあいいだろう、と、俺は再び足を動かす。
妙だ。
俺は今自分の部屋の前にいる。
『ブラッド隊隊長』
うん。俺の部屋だ。間違いない。
では何が妙かというと、俺の後ろには先ほどの少女がまだいる。
これは少しまずいんじゃないか。この流れではこの子も一緒に部屋に入ってくるかもしれない。
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