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ピウピウ
第五章
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「それでもね」
「ああ、御前が好きな様にな」
「やってみろよ」
「そうしてみるよ」
 自分と同じくマオリ族の服になっている友人達の言葉にだ、トーマスは笑顔になった。そして実際にマオリ族の踊りもしてみた。
 そしてだ、彼はその中でわかったのだった。そのことを大学で同じ学部にいる友人達にもバンド仲間にも話した。
「ニュージーランドは一つじゃないんだよ」
「白人だけじゃない」
「そう言うんだな」
「うん、確かに白人の社会があってね」
 ニュージーランドの中にというのだ。
「マオリ族の社会もあるんだよ」
「そうだよな、昔から住んでいるな」
「その人達の社会もあるよな」
「それが完全には分かれていないんだ」
 こうも言うのだった。
「混ざってもいるんだ」
「ああ、御前やディムみたいにな」
「ミックスもしていて」
「それで一緒にいるんだな」
「そうだよ、もっと言えば他にもあるよ」
 ニュージーランドのその中にはというのだ。
「ニュージーランドにはね」
「白人、そしてマオリ族にか」
「他にもか」
「あるのか、この国に」
「そうなのか」
「うん、生きものの社会もね」
 そちらの社会もというのだ。
「あるよ、羊やキーウィ、ムカシトカゲもね」
「そうそう、そうだったな」
「ニュージーランドはそうだよ」
「我が国はな」
 そうした生きもの達の名前を聞いてだ、誰もが納得して頷いて応えた。
「人間より羊の方が多いからな」
「それも二十倍以上な」
「キーウィは我が国の象徴みたいな鳥だしな」
「ムカシトカゲも忘れたらいけないな」
「彼等の世界もあるからね」
 だからというのだ。
「そのことも忘れないでね」
「そうだな、この国にも色々な社会があるな」
「白人の社会にマオリ族の社会にな」
「羊やキーウィの社会」
「ムカシトカゲだっているしな」
「そのこともわかったよ、僕はね」
 マオリ族の服からというのだ。
「ピウピウを着てからね」
「マオリ族の血も感じてか」
「元々御前の中にあったそれをか」
「感じてなんだな」
「そうなんだ、それからふとね」
 こうも言うのだった。
「牧場にも行ってわかったんだよ、そこに羊がいて」
「成程な」
「一つのことに気付いて他のこともか」
「気付いていったんだな」
「そうなんだ、けれどどの社会も面白いよ」
 トーマスは微笑んでこうも言った。
「我が国の中にあるどの社会もね、だからね」
「だから?」
「だからっていうと?」
「今日はお昼にラムを食べるよ」
 笑顔でだ、その羊の肉をと言うのだった。
「ハンギもね」
「マオリ族の料理もね」
「そっちも食べるんだな」
「あとデザートはキーウィのケーキと紅茶を」
「鳥じゃなくてフルーツのか」
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