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竜騎を駆る者
2話 行軍と思惑
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地は目と鼻の先であった。今休息をとったとしても、昼までにはゆうに辿り着ける場所にいた。

「と言うと?」
「調練に来た部隊を、出迎える」
「おお、それは確かに面白そうですね」
「戦では、相手の意表を突くのが最も単純で効果がある。合同訓練が始まる前に、奇襲をかけるのは面白いだろう」
「やりましょう」

 カイアスに告げると、目を輝かせた。軍属では、娯楽は少ない。それ故、自分たちより上の者を驚かしたりすることが、密かに流行っているのだ。ちなみに驚かすと言うのは、驚嘆させると言う事であり、無礼を働く事では無い。
 
「では、あと少し、駆けるぞ」
「はい」

 夜。月明かりのもとで、何と言う事の無い悪だくみの計画を立てる。悪だくみと言うよりは、自分の麾下の実力を示すだけなのだが。恐らく、王やその他の人間は我らが時間通りに辿り着く事は無いと踏んでいるだろう。それ故、その予想の斜め上を行く。それは、とても魅力的な事に思える。
 ふと、天を見上げた。頭上には赤と青の月が優しく輝いている。美しい、ただ、そう感じた。馬蹄が響き、馬が嘶く。愛馬が鳴いたことで、意識を行軍に戻した。陽の光の下では無く、月明かりの下で闇を駆ける。自分たちにはそれが似合っている。己が身に纏う漆黒の鎧を一瞥し、そう思った。




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