2話 行軍と思惑
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ドロスはにやりと笑みを浮かべる。
「ねぇ、お姉さま。エル姉、見事に乗せられてるよね。元々取りつく島もない感じでギュランドロス様に噛みついていたのに、いつの間にか試してみる事になってるし。まぁ、あたしとしては、うちの軍に奇襲してきてギュランドロス様まで迫った男って言うのに興味があったから、そいつをエル姉が直々に試すって言うのなら、それはそれで良いんだけど」
「あらあら、パティちゃん、それはエルちゃんには言っちゃだめよ」
「うん」
残った二人は、ギュランドロスの意図に気付いていた。ギュランドロスは何時もふざけている様に見えているが、実に巧みに相手を乗せる事で、相手も気付かないまま、相手の意思を自分の意に沿う形に動かしてしまうのだ。そう言うところは流石に王と言ったところで、真意にエルミナに悟らせず、自分の欲求も満たす。尤も、エルミナは普段はしっかりしているが、どこか抜けているところがあるので、気付かないだけかもしれないが。
「ふふ、私が見極めてあげます」
「おう、頼んだぜ、エルミナ! お前が直々に試した結果なら、誰も文句は言わねぇからな」
「はい、任せてください!」
試して化けの皮をはがしてやればいいと、自分の中で結論を出したエルミナに、ギュランドロスは笑顔で声をかけた。それに、エルミナは凛々しく答える。かみ合っているようで、かみ合っていない二人にルイーネは何時もの如く、あらあらと嫋やかな笑みを浮かべている。そんな皆の様子に、パティルナ苦笑を浮かべた。
「原野を駆ける我らが意思に、竜をも破る峻烈なる加護を」
左腕。義手している手で魔剣を持ち、魔法を発動した。漆黒の騎馬隊が紅を靡かせ、駆ける。自身が麾下に与えた、真紅の布が淡く光を放ち、全軍に加護を授けているのが、良く解った。
その行軍速度は、ユン・ガソルの騎馬隊のどれと比べても、速く、ただ闇夜の中を月明かりに照らされて駆け続ける。新兵とは思えない速さであるが、この程度の速さは出して貰わなければ困る。まだまだ発展途上であり、目指している力量には程遠い。
馬が潰れないぎりぎりのところを、昼夜を問わず進んだ。指揮官として、補助の魔法を発動し、その加護を以て馬と兵の負担を減らし、一心に目的地に向かう。これは訓練では無く、戦なのである。そう思った。
流石に丸一日駆け通すと馬はつぶれてしまうため、駆け通すことはできないが、それでもありえない速度で目的地に向かっていた。奇襲をするのは、相手の意表を突くのが肝要である。そういう意味では、確かに戦であったのだ。王の想定以上の速度で進んでいるのだ。
「この速度ならば、今日一日ゆっくり進んだとしても、充分たどり着けますね」
「だろうな。だからこそ、趣向を凝らしたい」
三日目の深夜であり、もう目的
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