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竜騎を駆る者
2話 行軍と思惑
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った。
 それを首に巻き付け、告げた。

「これよりお前たちは、真の意味で我が麾下となる。その名に恥じぬ働きを、期待している」
「応!」

 辺りに声が響き渡った。ある種の儀式ともいえるこの行動で、一体感がさらに増した。そう思った。

「では行こうか」
「此れより出立する。皆の者、遅れるなよ!」

 カイアスに短く告げると、声を上げた。それで、軍は一つになる。
 こうして、野営地を後にし、合同訓練の行われる地に向かい、駆けた。黒の中で光る、真紅。風を受け靡いていた。





「ギュランドロス様。なぜあのような男を引き入れたのですか?」
「はっは。またそれか、エルミナ。一軍を任せるに足る才を見た、と言っているじゃないか」

 合同訓練が行われる、レイムレス城塞の政務室、ギュランドロスと三銃士が揃い話をしていた。三銃士と言うよりは、エルミナ・エクスが、一人ギュランドロスに文句を言っていると言う形である。ギュランドロスはまたそれかと、めんどくさそうに応じる。傷付き倒れ伏す敵将を引き入れると決めたときから、何度も言い聞かせたことであった。

「しかし、彼の者はギュランドロス様の命を狙ったんですよ! 先の戦いでは、メルキア軍に所属していて、私たちを襲った相手です。そこの辺りをきちんと解ってるんですか?!」
「ああ、わかってる、ちゃーんとわかってるよ。あいつは俺たちの布陣を突き崩した張本人だよ。本来負けるはずが無かったあの戦での敗北は、いわば奴一人の為に起きたもんだ。だからこそ、その力が欲しいんだ。今の俺たちじゃ、メルキア帝国に負けない事はできるが、勝ち切る事ができるかは微妙なところだ。それ故、使える人材はいくらでも欲しい。あれほどの大才ならば、喉から手が出せそうだぜ!」

 口うるさく諌言するエルミナを、ギュランドロスは落ち着いた声音で諭す。既に決定した事項であるし、覆すことはできない。だが、それでも口うるさくしてしまうのはエルミナがギュランドロスを、ひいてはユン・ガソルの事を本気で考えている証しだった。どこか、不器用な女性騎士の姿に、ギュランドロスは僅かに笑みを零す。良い部下を持ったのである。

「しかし、私は納得できません」
「む、しかしもう決まったことだ。それを掘り返すのは女々しいぞ、エルミナ。まるで女みたいじゃないか」
「……ギュランドロス様、私は女です」

 エルミナは、不機嫌そうに答える。誰だって、女性が自分の事を女じゃないと言われれば、不機嫌にもなるだろう。

「だっはっはっは、わかってるさ。少し茶化しただけだ」
「……殴っていいですか?」

 心底楽しそうに笑うギュランドロスに、エルミナは少し引きつりながら答える。根が真面目なエルミナは、何時もギュランドロスに翻弄されるのである
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