2話 行軍と思惑
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言うのは、その足であり、勢いである。兵個人の強さを上げるのにはそれ相応の時間がかかるが、全軍で疾駆したときの馬の脚は、まだまだ余裕があったのだ。それ故、どれだけ駆けても隊列が乱れないようにするための訓練に、重点を置いていたのである。速さは、かなりのモノになっていた。行軍速度だけならば、ユン・ガソル最速だと言う自信があった。それぐらいの仕上がりになっていたのだ。しかし、まだ満足はできたわけではない。自分の理想とする麾下とは、ほど遠い。
さらに言えばレイムレス城塞付近に入れば、あとは自分の庭のようなものであった。元々はメルキアの領土であった場所である。それ故、何処を駆ければ最も早いかと言うのは直ぐに見当がついた。それらを考慮して、十分に辿り着ける。そう、思った。
「全軍に通達。これより、出立する。ただちに、集まれ」
「はっ」
その為、直ぐに麾下を集める事にした。
「以前から伝えていた合同訓練の為、今よりレイムレス城塞に向かう」
「はっ」
全軍を集め、要点だけを告げる。麾下である兵士たちは、これまでの調練から自分の人となりを学んだのか、余計な事を口に出さず、ただ黙って聞いていた。良い具合に仕上がってきている。そう、思った。命令を忠実に遂行する。精強な軍を作るには、何よりも大事な事であった。
「しかし、まともに進んだのでは、刻限通りに辿り着く事はできないだろう。それ故、これは戦だと思え」
「夜間での行軍も想定している、と言う事だ」
自分の言葉に、副官であるカイアスが補足を告げる。それにより、僅かに動揺が広がるも、直ぐに収まった。兵士の心を良くつかんでいる。そう思った。今はまだ、自分達の指揮官がどれほどの腕か解りかねているため、どちらかと言えば直接調練を施した時間が長いカイアスの方が人望はあったのだ。
「出立をする前に、皆に渡しておくものがある」
頃合いか。そう思ったところで告げる。兵は皆、漆黒の具足を身に纏い、その場に待機をしている。自分も、兵士と同じ漆黒の具足を身に纏い、その上から指揮官らしく外套を纏っていた。
黒は、夜間での行動をするに有利な色であった。夜襲などの際、夜が味方をするのである。しかし、漆黒の部隊と言うのはユン・ガソルの中では少々異質であったが、自分の存在自体がユン・ガソルでは異端なので、あまり気にはならなかった。
取り出したのは、真紅の布であった。魔力を用い編まれた、特殊な物であり、それを一人一人の兵に与えた。自身が使う補助の魔法を受け取る媒体であった。これを身に着ける事で、我が軍の一員と言う事を区別すると同時に、魔法発動後の受信機ともなるのである。そして、赤と言うのに拘りがあると言う王の言を尊重し、真紅の布と言う形で皆に渡した。この布一枚一枚が、高価な物であ
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